Bitter&Sweet 13話

「…」「大丈夫か」「!」目を覚まして飛び込んで来たのは源治さんの心配そうな顔だった。「あ…わ、私」「医者は一時的な貧血症状だろうと」「お医者さんを呼んだんですか?」「…」(ラブホテルにお医者さんを呼ぶなんて!)恥ずかしいと思いつつも、私の事を心配してそうしてくれたのだと思うと厭な気持ちにはならなかった。「貧血…ですか」「…精神的な疲れもあるんじゃないか、とも」「…」云い辛そうに呟いた源治さんの言葉に私は...

Bitter&Sweet 14話

(私…いつの間にか源治、さんの事を)「…」一度そう思ったらもう止まらなかった。「由梨子?」「…」どう取り繕っても顔が赤くなるのを止める事なんて出来なかった。「由梨子」「あ、あの…わた、私…」今度は私の方がまともに源治さんの顔を見る事が出来なくて妙にソワソワし出してしまった。(ど、どどどどうしよう…顔、見れない!)有り得ないほどの恥ずかしさを感じていると、急に両肩にガッシリとした掌が置かれ、其のまま押し倒...

Bitter&Sweet 15話

はぁはぁ…と浅い呼吸を繰り返していた。喘ぎ声を出し過ぎて少し喉が痛い感じがした。「──すまなかった」「…ぃ、いえ」一度絶頂を迎えてからも再び行為が再開され、結局陽が暮れるまで私たちは抱き合ってしまっていた。「体、大丈夫か」「はい…何とか」ゆっくり起き上がって体を動かした瞬間、グボッという水音と共に私の中から漏れ出た源治さんの精液が太ももを伝って垂れ流れた。「! なっ」「す、すまない」「…」少しお腹が苦し...

Bitter&Sweet 16話

「行って来る」「はい、行ってらっしゃい」月曜日、午前7時。明け方に屋敷に帰宅した私たちは別々だった寝室を一緒にして少しの時間仮眠を取った。しかしほんの数時間後、源治さんは慌ただしく身支度をして出社するために玄関に立っていた。「由梨子」「はい」「何処か行きたい処があったら自由に出歩いていい」「えっ」其れは突然の事だった。「いいんですか?」「あぁ」短くそう答えて源治さんは車に乗って行ってしまった。(ど...

Bitter&Sweet 17話

(あれは)見間違える筈がなかった。だって「お母さん!」「えっ…由梨子?!」駅を出て見かけた知った人は私の母だった。父の会社が倒産した時、父が負債を抱えた生活を母に強いるのは申し訳ないという理由から離婚した母だった。母はお嬢様育ちだったから尚更そう思ったのだと思う。初めは離婚に反対していた母も父の粘り強い説得で気持ちを知り、渋々離婚に応じた──という経緯だったために決して泥沼の様な離婚劇があった訳では...

Bitter&Sweet 18話

「竹井さんならいない」「えっ、いないって」屋敷に帰った私は今日あった事を寝室で源治さんに話した。実家に行ったけれど父には会えなかったと──すると源治さんは事も無げにそう云った。「現場監督として北陸の方へ行ってもらっている」「其れって…単身赴任って事ですか?」「まぁそうだな。竹井さんが手がけた設計の建築が始まって、どうしても現場で直接指揮を執りたいと云ってな」「…そうだったんですね」もしかして其の事があ...

Bitter&Sweet 19話

体中汗や其れ以外の液体でベトベトになっていた私は源治さんと共に大きな浴槽に浸かっていた。「すまない、無理をさせた」「…いえ」後半からとても激しいセックスが続いた。私よりも年上で40代だというのに、源治さんはスタミナが切れる──という言葉を知らないのかと思うほどに疲れ知らずだった。「止まらないのだ」「え」「由梨子を抱くと…俺の中の性衝動が…」「…」其れは喜んでいいのかどうか答えに困る言葉だった。ポチャンと天...

Bitter&Sweet 20話

「旦那様は32歳の時に同じ建設関係の会社の社長令嬢の彩奈様とご結婚されました」「あやな…さん」「旦那様と高校大学が同じで、元はご友人という関係の才色兼備なお方でした」「…」(これは…)思った以上に厭な話だと思った。いくら自分で望んだ事とはいえ、愛する夫の前妻の聡明さを知る事になったのだ。(私とは違いすぎる…)たった少しの情報を訊いただけで既にへこんでしまった。「だからおよしになりなさいなと云ったのです」...

Bitter&Sweet 21話

翌日、私は着せ替え人形の様に何着ものドレスを身に纏っていた。「あの、澄子さん」「あぁ、動かないでくださいませ、奥様」「…」この状況は昨夜源治さんから訊かされた祝賀会のためのドレスを選んでいる処だった。「あぁ、やはりお若い方は何色を着てもお顔が映えます事」「そうでございましょう」「…」昔から伊志嶺家に出入りしている仕立て屋だという女性が先刻から何着も私に着る様に勧めるのだ。「でもやはり…ピンクが一番お...

Bitter&Sweet 22話

伊志嶺建設の本社ビルで行われた優秀建築士を称える祝賀会はつつがなく始まった。「今年も斬新かつ個性的な作品が数多く発表され、これからの建築業界の一端を担うであろう若き建築士の育成を業務の要として掲げている我が社にとっては誠に喜ばしい事であり──」社長である源治さんがスピーチを述べている間、私は会場の隅でジッと其れを聞いていた。其れと同時に何となく好奇の目に晒されている気がして少し居心地の悪さを感じてい...

Bitter&Sweet 23話

南 春登──彼は私が短大に入ったばかりの頃、合コンで知り合った3歳年上の大学生だった。カッコよくて明るくて、場の雰囲気を明るく盛り上げてくれるようないわゆるモテ男だった。『え、竹井さんのお父さんって建築士なの?』大学の建築学科に席を置いていた彼とはそんな会話がきっかけで意気投合して付き合う様になった。私にとっては初めての彼氏で、ファーストキスの相手でもあって、そして──「由梨子」「! あっ」ギュッと胸を...

Bitter&Sweet 24話

祝賀会から数日後、相変わらず何処か余所余所しさが窺える源治さんとの距離に溜息をつく日々の中、携帯にメールが届いた。「…え」内容を見て驚いた。其処にはたった一行。【アドレス変わっていないんだね】「…」其れは明らかに彼からだった。私の携帯には既に彼のアドレスは消去済みだったので、届いたアドレスには覚えがなかったのだけれど、なんとなく直感で解った。(返信…ううん、しちゃダメ)私は其のメールを削除した。だけ...