Dizzy Love 11話



翔ちゃんの家に来たのはあの日以来──


中1の時、翔ちゃんに襲われそうになって、そして諒さんとの関係が始まったあの日以来の事だった。


「えーっとお茶…っていうかジュースの方がいいのか?」
「あ、おかまいなく」
「遠慮すんな。俺が飲みたいからついでって感じだし」
「…じゃあもらおうかな。何でもいいよ?」
「了解」
「…」


先に部屋に行っててくれと云われたので私は教えてもらった奥の翔ちゃんの部屋に入った。


翔ちゃんの部屋には初めて入った。


ちいさい時この家に遊びに来た事はあったけれど、其の時はまだ翔ちゃんは自分の部屋を持っていなかったから専ら遊ぶのは茶の間でだった。


(…意外に綺麗にしているなぁ)


翔ちゃんが聞いたら怒りそうな失礼な事を考えていると、お盆を持って翔ちゃんが部屋に入って来た。


「お茶でいいか?どうせなら温かいものの方がいいだろう」
「ありがとう、翔ちゃん」


急須から淹れてくれるちゃんとしたお茶だった。


「翔ちゃんってちゃんとしているよね」
「は?何、突然」
「ん…なんとなく?男子中学生が普通こうやって急須でお茶なんか淹れないでしょ?」
「そうか?うちは親父がいつもこーやって淹れてるからこれが普通だと思ってるけど」
「…そっか」


諒さんはそういう人だなと思った。


あの人は意外と古風なところがあって、昔ながらのやり方で色んな事をしているのをよく目にしていた。


出汁は鰹節を削るところから始めるとか、お米の伽汁で拭き掃除をしたりとか、包丁を研ぐのもお茶碗の底で研いでいたりと、うちのお祖母ちゃんがしているような事をよくやっていた。


見かけが派手でカッコいい分、其のギャプも堪らない魅力のひとつだった。


「──今、何考えていた?」
「え」


いきなり翔ちゃんが私の目の前に顔を近づけて来た。


「な、何も…考えてないよ…」
「…」
「…」
「──んで、話って何」


翔ちゃんはスッと私から離れてお茶を湯飲みに淹れながら訊いた。


「…話」
「あるっていうから俺の家まで来たんだろ?なんだよ」


そういえばそうだったなと思い出し、頭の中を切り替えて私は翔ちゃんと向かい合った。


「…うん…あのね…翔ちゃんって…付き合っている子、いる?」
「はっ…!な、何っ」


明らかに動揺している様で、翔ちゃんの持っていた急須がカチャンと音を立てた。


「翔ちゃんってモテるから沢山告白されているじゃない?其の…噂で告白して来た子と付き合っているって訊いたから」
「な、なんでそんな事…のんが気にするんだよ」


少し顔を赤らめた翔ちゃんが私から視線を外しながら云った。


「あ、別に付き合っている事をとやかく云いたい訳じゃないの!其の…つ、付き合っているとしたら…其の…アレ…とかするじゃない?」
「アレ…って」
「……してるの?翔ちゃんは…もう」
「……」


私の訊きたい事が伝わったのか、段々翔ちゃんの顔がほんのり赤くなりながらも真剣な顔つきになって来た。


「なんで…のんがそんな事に興味持つんだよ」
「え」
「仮に…俺が女と付き合っていて…其の…セ、セックス──していたら何だっていうんだよ」
「!」


『セックス』とはっきり単語にして云われた事が恥かしかった。


『アレ』なんて誤魔化して訊いたけれど、本当の事を訊きたかったら誤魔化すのはいけないのだと思った。


だから私は今の現状と気持ち、そして翔ちゃんにお願いしたい事をちゃんと云おうと思ったのだった。


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