Dizzy Love 18話



テレビの中でしか見た事のないような豪華な部屋に通され、お手伝いさんがお茶の準備をしてくれている光景をぼんやりと見ていた。


「さぁ、どうぞ召し上げれ」
「あ!…は、はぃ」


何処かの高級なお店みたいな飲み物やお菓子を前に緊張して手が震える。


「そんなにかしこまらないで?気楽に私とお喋りして欲しいわ」
「…」


にっこりと微笑まれた顔は何処か…ほんの少しだけ諒さんを彷彿とさせた。


「えっと…典子ちゃんっていったわよね?」
「あ、はい」
「典子ちゃん…もしかして諒と付き合っている?」
「…」


いまいちこの麗子さんと諒さんの関係が解らない状況でなんと答えたらいいのか迷っていると


「あぁ、ごめんなさい。別に責めている訳じゃないのよ?──というか…私と諒がどんな関係か解らないから答えられないって感じかしら」
「…」


黙って一回首を縦に振った。


すると麗子さんは諒さんとの事を話し始めた。


「私と諒はね、姉弟という関係よ」

「えっ、姉弟?!」
「といっても、母親違いの義姉弟ね」
「…」
「私の父はね、ご覧のとおりの成金で大きな会社をいくつも経営している名士なの。で、私は正妻の子で諒は妾の子って訳」
「…めかけ…って」
「あら、今の若い子は妾を知らないのね。つまり愛人って事よ」
「!」
「あぁ、でも愛人とは少し違うかしら。諒の母親は元々この家のお手伝いさんだったの。真面目な人だったけれどあまりにも綺麗だったから父が一方的に手をつけてしまったの」
「…」


諒さんがお金持ちの家の人だったというのも驚いたけれど


(そんな出生の秘密があったなんて)


「父に弄ばれ強引に愛人にさせられた諒の母親は、諒を産んで直ぐに諒を置いてこの屋敷から姿を消してしまったの」
「えっ」
「なんでも田舎に恋人がいたみたいで…いわば産み捨てって感じかしら。其の後諒の母親とは音信不通になってしまったの──まぁ、父は居所を直ぐにでも割り出せるでしょうけど其れをしなかったという事は少しは諒の母親にした事を悪かったと思っているんじゃないのかと思っているのだけれどね」
「そ、其れじゃ…諒さんは」
「諒は私の母が育てたわ。いくら愛人の子とはいえ赤ん坊に罪はないでしょう?そういう風に考える母だったの。私もひとりっ子だったから弟が出来たのは嬉しかったしね」
「…」
「其れに諒はなんというか…ちいさな時から不思議な魅力がある子でね。なんだか放っておけないというか、構ってあげたい、可愛がってあげたい、そういうオーラが出ていたのよね」
「オーラ…」
「だからちいさい時から諒はモテたわよ」
「!」
「諒を知った女は大抵諒に惹かれる。そして求める様になるの──勿論私や私の母も例外ではなく」
「……」
「諒は諒で生みの母親に捨てられたという気持ちから求められると応えなければならない、厭だと断って嫌われて捨てられたくないという気持ちが常に心の奥底にあったんでしょうね。女から求められれば誰とでも寝る男になったって訳」
「…」


諒さんの周りに常に女の人が群がっているのはそういう事だったのかと初めて納得出来た。


実の母親に愛されなかったという心の隙間を他に自分を求めてくれる女の人で常に埋めようとしていたのだ──


「そんな性分だったから諒はひとりの女を愛するという事はなかった。女の方も諒を相手にはするけれど本気にはならなかった。そういうのって解るでしょ?遊ぶ男と本気になる男は違うって。諒はまさに遊ぶ方の男だった」
「…」
「だけど運命の相手っていうのが諒にもいたのよね」
「え!」


思わず私は声を張り上げてしまった。


クスッと麗子さんに笑われてしまったけれど、恥かしい気持ちを抱えながらも麗子さんの言葉の続きを待った。


「知りたい?諒の運命の相手がどんな女だったか」
「…そ…其れって…しょ…翔ちゃんのお母さんって事、ですよね?」
「あら、翔を知っているのね」
「幼稚園の時からの友だちで…仲が…よかったんです」
「そう…そんなにちいさな頃から典子ちゃんは諒と翔を知っていたのね」
「…」
「典子ちゃんの云うとおり、諒の運命の相手とは翔の母親、翔子(ショウコ)の事よ」
「しょ…翔子…さん」


私は触れてはいけない諒さんの過去に触れようとしているのかもしれない。


だけど


どんな過去でも諒さんの事だったら何ひとつ残らず知りたいと私は思ったのだった。


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