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花筏の行方 2話



佐野さんと初めて逢ったのは今から二十年前。

大学のテニスサークルの一年先輩として紹介されたのが佐野さんだった。

はっきりいって── 一目惚れだった。

この世の中にこんな綺麗な男の人がいるだなんて信じられなかった。

だけど先輩後輩として付き合って行くうちに徐々に佐野徹矢という人となりを知って行く事になる。

類稀な其の美しい容貌通り、彼の周りにはいつも女が群がっていた。

彼自身、来るもの拒まず去る者追わず精神の持ち主の様で、見かける度に連れて歩く女はいつも違っていた。

そんな彼に嫌悪感を覚えつつもどうしても気になって惹かれてしまっている自分がいた。

だけど決して彼には私が恋をしているという態度は悟られたくなかった。


──だって自信がなかった


彼の周りには私なんかよりも数倍美しい女が常にまとわりついていた。

そんな女たちの中に飛び込みアプローチするほど自分に自信はなかった。

だから余計に彼に対して愛情とは裏腹な態度を取ってしまう。


『ねぇ、櫻子ちゃんってなんでいつも眉間に皺寄せてるの?』
『…其れは先輩の女癖の悪さに辟易しているからです』
『えぇーじゃあ俺なの?櫻子ちゃんの可愛い顔を暗くさせてるのって』
『! か、可愛いっ?!じょ、冗談は止め──』
『冗談じゃないよ?もっと笑えばいいのに』
『…』
『櫻子ちゃんの笑顔、俺がひとり占め出来たらいいのに』
『~~~』

からかわれているのだと解っていた。

彼の言葉を其のまま鵜呑みにしてはダメだと強く気持ちを引き締めた。

だけど時々囁かれる其の毒の様な甘い言葉は私の心を徐々に冒して行き…

⦅好き…好き…どうしたって大好き⦆

決して私だけのものにならない男だと知っているからこそ深入りするのは止めようと…

諦めようと思っていた。

そんな彼との付き合いで知り合った人がいた。

其れは彼と親しくしているという一年先輩の野々宮 秋穂(ののみや あきほ)という女性だった。

彼女を初めて紹介された時から彼女は彼の近しい女たちとは何処か違う雰囲気を持っているなと感じていた。

其れは何なんだろうとずっと疑問に思っていて、そんな気持ちから秋穂さんとも親しくさせてもらう機会が多くなった。


──そして気が付いたのだ


彼は秋穂さんの事が本気で好きなんだという事に。

あんなに女にだらしがない彼が実は一途にたったひとりに恋をしているのだと知った時、私の中で佐野徹矢という人物像が大きく書き換えられた。

本当は純粋に愛する気持ちを持っている人。

本当に好きな人には真摯なのだと、遠巻きから見ていて気が付いた。

だから私は益々彼の事を深く愛する様になってしまっていた。


──そして大きな事件が私に襲い掛かる事になる


其れは私が21歳の時。

大学を卒業した秋穂さんが佐野さんとは違う人と結婚した。

つまり佐野さんは秋穂さんにフラれたのだ。

秋穂さんの結婚式が行われた日の夜、私は電話で佐野さんに呼び出された。

呼び出された先はとあるホテルの一室だった。

行く事を何度も断ったけれど、ろれつの回らない云い回し、其れに訳の解らない言葉を喋っている事から尋常じゃない様子が窺え、心配になった私は結局行く事にした。

恐る恐る尋ねた部屋にはいくつものお酒の瓶が散乱していて酷い酔い方をした佐野さんがいた。

『先輩?!どうしたんですか、其の有様は』
『あ?あぁー櫻子ちゃぁん~来てくれたんだねぇ~』
『ちょっと飲み過ぎですよ!水…水を飲んで──』
『櫻子ちゃん』
『!』

力強く引っ張られた腕の反動で私の体は佐野さんの腕の中に納まり、其のまま床に押し倒された。

『秋穂…秋穂…』
『…』
『なんで…なんで清次なんだよ…俺の何処が駄目だって…云うんだよぉ』
『…』
『秋穂、秋穂…』


抵抗しようと思えば出来た。

厭だと、本気で拒めば彼は止めてくれたと思う。


──だけど私はそうしなかった


例え秋穂さんの事を想いながらでも私は彼に抱かれたかった。


例え秋穂さんの身代わりだったとしても…


⦅最初で最後の想い出にするから⦆


其の覚悟で私は佐野さんに抱かれたのだった。

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