スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

花筏の行方 5話



ピンポーン


「…?」

不意に鳴ったチャイム。

(あれ、鍵持って行かなかったのかな)

私は不思議に思いながらも玄関ドアを開けた。

「どうしたの、壱矢。鍵忘れた──」
「…いちやって誰」
「!」

其処にいたのは思い込んでいた人物ではなく、つい数時間前にホテルに置き去りにして来た人物だった。

「なっ…!」
「俺をホテルに置き去りにするなんて酷いよね。これでも結構傷ついているんだよ」
「なんで…此処に…」
「家の住所なんてちょっと調べれば解るよ。櫻子ちゃんがなんで其処まで頑なに隠していたかは知らないけどさ…今、ようやく其れが解った」
「…」
「ねぇ、いちや、って誰」
「…」
「彼氏?」
「…」
「其れ、俺に隠したかったんだよね?そうでしょ、櫻子ちゃん」
「…か」
「か?」
「帰って!直ぐに帰って」
「酷いなぁ、折角来たのに。何、彼氏が来るの?」
「ち、違う…彼氏、なんかじゃ…」

先刻から体が震えて仕方がなかった。

声が上擦って上手く出ない。

すると突然

「いい加減ハッキリさせようか」
「!」

いきなりガッと手首を掴まれた。

其の力強さに骨が軋んだ。

「痛っ」
「櫻子の本当の気持ちを聞かせてよ」
「!」

『櫻子』と呼び捨てにされた瞬間、私の双眸から涙が溢れた。

「! え、櫻子ちゃ」

「おい!」

「っ!」

瞬間、佐野さんの手が私の手首から放された。

「あっ」

其のまま佐野さんの体は後ろに引っ張られ、ドンッという音と共に地面に叩きつけられた。

其の様子がまるでスローモーションの様で私はただ茫然として見つめるしかなかった。

だけど

「てめぇ、何してんだよ!」
「わっ!」

「止めて!壱矢っ」

「!」
「!」

佐野さんに馬乗りになって殴りかかろうとしていた壱矢の前に出て私は佐野さんを庇った。

「なんだよっ、止めんな!」
「殴っちゃダメ!お願い、殴らないで!」
「…」

ギュッとしがみついた佐野さんの体は微かに震えていた。

だけど其の震えは次第に治まり、しがみついている私の体を佐野さんも抱きしめ返した。

「…櫻子ちゃん、俺を庇ってくれるの?」
「…」

正直頭の中は混乱していた。

何も考えられない状況の中で気が付いたら体が勝手に動いていた。

と同時に私の心は芯から震えていた。

(…バレた…壱矢の存在が…佐野さんに)

ずっと隠し続けていた秘密を此処に来て知られてしまった事への恐ろしさで、私の体はやがて大きな震えに包まれたのだった。

00000a34.jpg
★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチいただけると色んな意味で励みになります♪
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。