Bitter&Sweet 1話



小さい時から結婚というものは好きな人とするのだとずっと思っていた。

だけど年齢を重ねると共に、本当に好きな人と結婚するというのは奇跡の様な事なのだと思い知った。








「ぃや…あっ、厭厭ぁ!」
「…」

満足に濡れていない秘所に本番さながらにぐいぐいと挿入れてくる事ほど苦痛なものはなかった。

引き攣れた痛みは頑なに挿入を拒む、まるで私の意思其のものだ。

(どうして…どうしていきなり!)

私は酷く混乱していた。

だって訳の解らないままに今日、初めて逢ったばかりの男に私は今まさに冒されているのだから──




事の発端はよくある話だった。

「え、お見合い?」
「あぁ、そうだよ」
「…」

ある日突然父から云われたこのひと言から全ては始まった。

うちは昔、大きな建設会社を経営していて其れなりに裕福な生活をしていた。

しかし自社関連の下請け業者の手抜き工事が多数明るみになり、其れを受けて一気に業績は低下。

私が高校に入学する前には父の会社は倒産してしまった。

巨額な負債を背負い、今までの裕福な生活は一気に極貧生活へと変わった。

其の煽りを受けて私も高校進学を諦め、進路を就職に変更しなくてはいけないと思っていた矢先に父の
古い友人という人から学費の援助を受ける話が舞い込んだ。

おまけに一級建築士だった父は其の友人の会社に就職する事が出来ていた。

つまりは其の父の友人のお蔭で私たち一家は過酷な極貧生活から苦しいながらも普通の生活を送れるまでになった──という訳だった。

高校在学中、私もバイトをしながら少しは家計を助け、そして少しずつ借金を返しながら短大にも進学する事が出来、先日なんとか其の短大を卒業していよいよ本格的に仕事を頑張ろう!と決意していた矢先に其の見合い話が舞い込んで来たのだ。


「お、お見合いって…なんでそんな突然」
「先方からのたっての希望なんだよ」
「先方って…一体誰」
「伊志嶺 源治(いしみね げんじ)」
「い、伊志嶺さん?!」

其の名前を訊いて私は愕然とした。

そう、伊志嶺さんというのは父の友人。

ずっと私たち一家を支えて来てくれた人であり、私が内定をもらった会社の親会社である建設会社を経営している社長でもあったのだ。

「どうして伊志嶺さんが私を──」
「由梨子は付き合っている人がいるのかい?」
「い、いないけど…」
「伊志嶺くんは離婚歴があるけれど、もう長い事独身だ」
「…だから?」
「きっと上手く行くと思うんだよ」
「…」

この何処か能天気な父は時々こういう訳の解らない事を云う。

だけど…

(其れにしたって今回の話は能天気という言葉では済まない範囲の話だと思う!)

「兎に角いい男なんだよ~本当。絶対由梨子好みなんだから」
「何よ其れ!…確か伊志嶺さんってお父さんよりも…」
「3歳下」
「?! 有り得ない!そんな42、3歳のおじさんとお見合いだなんて有り得ないよ!」
「頼むよ~一度だけ、一度会うだけ!伊志嶺くんがどうしてもってきかなくて…」
「…」

伊志嶺さんという人はいい大人のくせに、20歳の娘をどうにかしようと思う様な非常識な人だったのか?!

(変態だわ、エロオヤジだわ!)

私は伊志嶺さんに直接会った事がなかった。

世話になったといっても全て父を通しての事で、私は一度も伊志嶺さんという人と話した事もなかったのだ。

そんな人が私と見合いをしたいだなんて…

(そう考えるしかないじゃない!)

「恩のある人だからさ…断れないんだよ。お願い、一度会うだけでいいから、ね」
「…」


竹井 由梨子(たけい ゆりこ)

20歳の春先に受けた衝撃的な話に戸惑うばかりだった──

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