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2018.02.04 (Sun)

Darling Sweeper 6話



内野宮さんとの間に深い溝みたいなのが出来てしまったと感じてから数日。


たまに会社の廊下で内野宮さんと逢う事もあったけれど、お互い気まずさから目を逸らしてしまってなんだか避ける様にやり過ごして来た。


(やっぱり…嫌われたかな)


以前の様なやり取りが懐かしく思える。


元々見かければ声を掛け合って、立ち話をして…ただ其れだけだった。


そんな状態だったから私は内野宮さんの事をすごく知っていた訳じゃなかった。


勝手に自分の中で内野宮さんというイメージを作り上げて逆上せていただけだったのだ。



──芽生え始めていた恋心は花開く前に萎んでしまった様だ



「おっと」
「きゃっ!」


急に感じた大きな振動で、私は誰かとぶつかってしまったのだと気がついた。


「す、すみません!私の前方不注意で──」


すぐさま頭を下げてぶつかった人に謝罪した。


「いや、大丈夫。其れよりも君は大丈夫ですか?」
「は…」


思いがけず優しげな声を掛けられ思わず顔を上げた。


「──おや、君は…」


そう言葉を発した人は私の顔をマジマジと見た。


其の人はスーツ姿の50歳前後の身なりの良いとても素敵な男性だった。


(あれ?この人…何処かで)


「社長!大丈夫ですか?!」
「えっ!」


(しゃ、社長?!あっ!確か入社式の時に挨拶していた──)


「あぁ、大丈夫だ。其れより──」
「しゃ、社長!重ね重ねす、すみませんでした!!」


(よりにもよってぶつかった人が社長だったなんて!)


最近の私の運の悪さは此処まで来たかと呪いたくなった。


「あぁ、頭を上げなさい、わたしは大丈夫だから。其れよりも君、もしかして…恵麻ちゃん…かな?」
「──は?」


いきなり社長の口から私の名前が出て驚いた。


「…え、な、なんで知って──」
「やっぱり!住吉恵麻ちゃん、いや、もう『恵麻ちゃん』なんて歳じゃないかな」
「……」
「わたしを覚えていないかな?『こんにちはー毎度ナギノクリーンカンパニーでーす』」
「! あぁぁぁぁぁ」


一瞬にして記憶が色鮮やかに押し寄せて来た。


「ふふっ、思い出してくれたかな?」
「お話中申し訳ありませんが社長、次の会合までお時間が…」
「30分遅らせてくれ」
「は?」
「わたしは用事が出来た。すまないが30分後に役員室まで迎えに来てくれ」
「ですが──」
「時間の帳尻も秘書の仕事のひとつだよ」
「──かしこまりしました」


「……」


私は目の前で繰り広げられる光景をただ呆然と見ていた。


私に喋りかける時とは全く違う声色。


確かにこの人は…


(社長──なんだ)



私の前にいるこの人は確か、奈木野(なぎの)さんといった。


この人はかつて母が生きている時に家にレンタルモップを交換しに来てくれていた人だった。


とても素敵な人で家に来る度に私と弟にお土産をくれた。


(其の人がまさか…まさか社長だったなんて!)


あまりにも驚いてしまって私はただただ呆然としているだけだった。


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