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2018.02.03 (Sat)

Darling Sweeper 5話



「ちょ、ちょっと!」
「…」


どうしよう…


(何処に連れて行かれるんだろう)


私はこれからどうなるのかという不安でいっぱいになりながらも、思いっきり抵抗出来ない自分自身に戸惑っていた。


ロッカールームのある細い廊下の其の先、突き当たりのドアには【関係者以外立入禁止】のプレートが張り付いていた。


だけど内野宮さんは其れを無視してポケットから鍵の束を取り出し、ひとつの鍵を選び鍵穴に差込み簡単に開けてしまった。


(なんで?!)


本社のクリーンスタッフの権限はこんな処まであるのか、と考えていたら扉の奥にまたドアがあった。


内野宮さんはまた鍵を取り出し、其のドアをも開けて私を中に押し込んだ。


「きゃっ!」


勢いよく黒い革張りのソファに投げ出された私は、倒れ込む様に体ごと横たえてしまった。


内野宮さんはそんな私の上に間髪入れず跨った。


「な、何を」
「恵麻」
「!」


急に名前を呼ばれドキッとした。


「な、なな、なんで…なまえ…」
「呼びたかったから」
「え」
「なんで俺の事、避けるんだよ」
「…」
「俺、おまえに何をした?まだ何もしていないだろう」
「……」
「あの日から…どうしてだか調子が悪いんだよ」
「…え」
「おまえに泣かれて…『内野宮さんを嫌いになんかなりたくなかった』なんて云われて…でも其の台詞って裏を返せばおまえは俺の事を好きだって事だろう?」
「…そ、其れは…」
「なのになんであの状況で拒むんだ?!おまえにとっては好条件の取引だろう?」
「!」


『取引』


其の言葉に私はまたあの時と同じ気持ちになった。


「──した…」
「え?」
「わ、私…内野宮さんの事…気になっていました」
「…」
「優しくて…頼りがいのある人だなって…厭な顔ひとつしないで、寧ろいつも愉しそうに床を磨いているのを見ていたらこっちまで気持ちが清々しくなって…いつも…そんな気持ちにさせてもらっていました」
「……」
「もう惹かれていたのかもしれません…だからこそ…取引とか…見返りとか…そういう事で抱いてもらいたくなかった」
「!」
「私の中の内野宮さんのイメージを…壊された気がして…悲しかったんです」
「……恵麻」


私は内野宮さんの掌の力が緩んだ瞬間に前と同じ様に体を押し戻し、サッとソファから立ち上がった。


「…私は…内野宮さんが今まで付き合って来た女の人とは違います!」
「!」


そう捨て台詞の様に吐き捨てて、私は部屋から飛び出して行った──











「──なんだって云うんだ」


恵麻が出て行った部屋で俺はひとり呆然としていた。


なんであの女の事がこんなに気になるのか解らない。


今まではいつも俺が誘えば簡単に股を開く女ばかりだった。


──ずっとそうやって見極めて来たはずだ


「……」


いや、俺の思う様にならない女──そんな女もたまにはいたかもしれない。


だけどそんな女の事は無視して、早々に切り捨てて来た。


今回もそうすればいい。



すればいい…のに──



「……住吉…恵麻」


其の名前を呼ぶだけで何故か心がかき乱された。


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