Darling Sweeper 30話

奈木野さんの告白は私にとても大きな衝撃を与えた。(まさか内野宮さんが奈木野さんの息子だったなんて!)奈木野さんは私に向かって静かに話し出した──「麻美さんが結婚して少し経ってわたしは要の母親である麗子と見合い結婚した。麗子は資産家の娘で気位が高く、気性の激しい女性だった。わたしとの結婚はいわゆる親同士が決めたものでお互い意に沿わぬものだったけれど断わる事が出来なくてね。麗子は義務的に跡取りとなる要を...

Darling Sweeper 29話

思い切って全てを奈木野さんに話した。内野宮さんとの事を、話せる範囲までの全てを。「…私は内野宮さんを信じたい気持ちと、だけど現実で見せらされる姿とのギャップの狭間でもうどうしていいのか…気持ちがぐちゃぐちゃで」「……」「とっくにフラれているっていうのに未練がましいとは思っているんですけれど…でもどうしても気持ちの整理がつかなくて」「……」「? …あの…奈木野さん?」先刻から奈木野さんの様子がおかしかった。...

Darling Sweeper 28話

最初に話したのは父との間にあった確執の事だった。これは概ね奈木野さんも事情を知っていた。亡くなった母が奈木野さんの会社に勤めていた事、そして母に仄かな恋心を抱いていた事から母を通じて父とも親交を持っていたという奈木野さんも父の早過ぎる再婚に関して詳しい事情を知らなかったようで、私から真相を訊いてなんともいえない顔をしていた。「麻美さんが其処まで考えて根回ししていたなんて……本当に…生恵さんの事を愛し...

Darling Sweeper 27話

夜19時──待ち合わせは私のアパートから一番近い最寄駅だった。見慣れた車がスゥーと横付けされた。私は素早くドアを開け車内に乗り込んだ。「こ、こんばんは」「こんばんは、恵麻ちゃん」社長と食事の約束をしていた私は、メールで今日会社を休んでしまった理由を簡単に書き、約束どおり食事をする時間を取ってもらった。「よかった。意外と元気そうな顔色だ」「…無断欠勤、本当にすみませんでした」「いやいや、大丈夫だよ。わた...

Darling Sweeper 26話

──気がついたらカーテンの隙間から太陽の光が漏れていた「…」どうやって帰って来たのか記憶がなかった。でもちゃんと玄関のドアは鍵が掛けてあったし、靴も揃えてあった。洋服も部屋着に着替えてあった。でも、お風呂は入っていないみたいだった。化粧は其のままだったし、髪の毛も汗で少しべたついていたから。途端に気持ち悪さを感じた私はのっそり立ち上がり湯船にお湯を張り、程よく溜まった時点で勢い良く湯船に入り込み、鼻...

Darling Sweeper 25話

『おれは恵麻が傷ついて泣くのを見たくないから諦めない。例え恵麻が内野宮さんの事を好きだとしても絶対に認めない』結局詠二には解ってもらえなかった。はっきりと自分の気持ちを伝えたのに。詠二とは付き合えないと──仮に内野宮さんと何もなくても…ちゃんと付き合うことが出来なくても…だからといってじゃあ詠二と付き合うという事は出来ないのだ。(…本当私、詠二に残酷な事を云っているな)朝の爽快感とはうらはらに自己嫌悪...

Darling Sweeper 24話

午前中の野外実習はとても大変だった。住宅周り、庭、下水、色んな箇所での掃除の仕方があって、綺麗にする仕事なのに自身はとても汚れてしまうという相反する状況にちょっとやるせなさを感じた。だけどどんな仕事だってそういうものなんだろうなと思った。最近になって私は、綺麗になる事、綺麗にする事、其々の方法を学んで行く度に自分の心までが磨かれているような気がしてならない。確かに清掃活動は大変な重労働だ。だけど其...

Darling Sweeper 23話

翌日、不思議な事に起きた瞬間、とても気持ちが晴れやかだった。昨夜遅くなった美生に泊まって行けば?と云ったけれど、家に帰って父さんとお義母さんに話したい事が出来たからと云って終電ギリギリで帰って行った。起きてメールの着信に気がついた。美生からだった。【姉ちゃん、今度休みが取れたら家に帰って来いよ。父さんもお義母さんも待ってるって云ってたから】「…ふふっ」美生がどんな風にふたりに私の事を話したのかが窺...

Darling Sweeper 22話

母が亡くなってからわずか一年で再婚した父の事を軽蔑していた。いくら寂しいからといっても亡くなった母の気持ちを考えたらとても辛かった。だから私は父に対して、ひいては男の人全てに対して、安易に『愛している』と口に出す人を信用出来なくなってしまった。私は女の人に嘘をつかない、浮気をしない、そんな折り目正しい人を見つけて、そんな人じゃないと付き合えないと思って来た。──だけど「解った?父さんの再婚は死んだお...

Darling Sweeper 21話

高鳴る胸を押さえながらアパートに近づくと──「あっ、姉ちゃん」「美生?!」アパート前にいたのは弟の美生(みき)だった。部屋の明かりを点け、美生を入れる。「おぉっ、なかなか綺麗にしてるじゃん。もっとめちゃくちゃだと思っていたのに」「あ、当たり前よ、一応私、清掃会社の社員よ?!」(あぁ…内野宮さんが片付けてくれててよかったぁぁ~)あれから日数は経っているけれど、汚いのがほんの少しで済んでいた。そっと心の...

Darling Sweeper 20話

月曜日──「おはよう、亜里沙」「おっす」「おはよう──って…あれ?ふたり一緒に来たの?」亜里沙がぽかんとした表情を私達に見せた。「あぁ、一緒に出勤だ」「詠二、声、大きい」「えっ?何、ふたり、付き合うことになったの?!」「付き合うっていうか…其の…」「まぁ、お試し期間って感じかな?」詠二の云った『お試し期間』という言葉が少しチクッと胸に刺さった。(なんだか詠二に申し訳ない)「えぇ?!どういう事よぉぉー」訳...

Darling Sweeper 19話

内野宮さんが部屋を出て行ってから私はしばらく呆然と其の場に座り込んでいたけれど、日付けが変わる頃にやっと再起動し始めた──とりあえず詠二へのメールの返信はもう遅い時間なので起きてからにしようと思った。食事の後片付けをして、お風呂に入ってベッドに潜り込んだ。静かな部屋の中、中々眠る事が出来ない。考えるのはやっぱり内野宮さんの事ばかりで…今更ながらどうしてあんな事を云ってしまったのだろうと酷く後悔した。...