2017.12.31 (Sun)

ひだまりロボット 10話



えらく派手でイケメンな人とふたりにされてどうしようかと考えを張り巡らせていると──


「やっと来たんだねぇ、小春ちゃん」
「えっ」


いきなり名前を呼ばれ、にっこりと微笑まれた。


「あ…あの…」
「ふふっ、本物は写真よりも可愛いなぁ」
「?!」


スッと近づかれそっと耳元で囁かれた。


「俺が佐野徹矢だよ」
「!」


(この人が佐野さん─?!)





「はい、どうぞ」
「あ…ありがとうございます」


佐野さんのラボラトリーだという部屋に連れていかれ、珈琲を淹れてもらった。


私は大学に来た目的だった佐野さんに会えてホッとしつつも、イメージしていた洵教授という肩書きにそぐわない本人を前に戸惑っていた。


「いやだなぁ…そんなに見つめられると俺、穴が開いちゃうんだけど」
「あっ、す、すみません」


不躾だったなと思って咄嗟に謝った。


「いや、冗談だから。本気で謝んないで?」
「…はぁ」

(なんだか全然洵教授って感じがしない)


どう接していいのか戸惑っていると


「で?今日小春ちゃんが此処に来たっていうのはなんのご用でなのかな?」
「…」


其の訊き方に違和感を感じた。


「小春ちゃん?」

「…あの…其の訊き方はおかしいです。先生は私が此処に来た理由を知っているはずです」
「どうしてそう思うの?」
「だって最初に会った時『やっと来たんだね』って先生は私に云いました」
「…」
「其れって私が何を訊きたくて此処に来たのかを先生は知っているからですよね」
「…」
「先生?」
「ふっ…ふっははははははははっ!流石清次の娘だ!!」
「?!」


突然豪快に笑われてビックリした。


(何よ、此処の人ってみんないきなり動作が大きくなるの?!)


最初に会った人もいきなりオーバーアクションをしていたのを思い出していた。


「は…はははっ、ごめんごめん…いやぁ…見かけほんわかしてて周りに流されて生きて来たって顔していたから…其の思惑がいい感じに裏切られてすっごく愉快になっちゃった」
「…はぁ」


(ほんわかで周りに流されてって…)


私、見た目がどうなんだろうとつい掌を頬にあててしまった。


「意地悪な訊き方してごめんね──うん、解っているんだ、小春ちゃんが俺の所に来たって事は…知りたいんだろう?」
「…」
「清次の事、俺の事、そして──ヒナタの事を」
「!」


(やっぱり私の知らなかった全ての事をこの人は知っているんだ!)


佐野さんの言葉に私の胸中は色んな感情が渦巻いたのだった。


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2017.12.30 (Sat)

ひだまりロボット 9話



「き、君は…野々宮博士の…娘さんだと云うのかい?!」
「…はい」


いきなり動作が激しくなった男の人に驚きつつも答えた。


「なんてこった!僕は尊敬する博士のお嬢さんになんて無礼を!!」
「! あの、父をご存知なんですか?」
「知っているも何も、博士は僕にとっては憧れの人!いいや、僕だけじゃない!機械工学を学ぶ人間は誰もが野々宮博士を尊敬しているんです!!」
「…は…はぁ…」


先ほどまでの口調、態度から一転、父の事を身振り手振りで饒舌に語る男の人を見ていたら、私の知らなかった父が其処にいた気がしてなんだか少しだけ複雑な気持ちになった。


「本当に…博士が亡くなられたのは僕に大きな悲しみを与えました…正直今でも信じられないのです」
「…」
「今でも博士の死に対して喪に服している学生がいます。其れほどまでに我等にとって野々宮博士は大きな存在でした」
「…ありがとうございます。きっと父も喜んでいると思います」
「! あぁぁ、勿体無いお言葉!其れだけで…其れだけで僕はぁぁぁ~~」
「…」


(えぇ…っと)


どうしよう…


ちょっとしんみりした気持ちがなんだかこの人のオーバーリアクションで潮が引く如くなくなって来ちゃった…


「あの!其れで…佐野先生の件なんですけど──」


多分放っておいたらずっとこのままんだろうなと危機感を感じた私は傍観を止め強く声を掛けた。


すると我に返った男の人は少し表情を強張らせた。


「…えっと…大変訊き辛いのですが…佐野先生には一体どういった用件で会いたいとおっしゃっているのでしょうか」
「え?どういったって…」


なんだか云い方が変だなと思った。


案内するのを躊躇っているかのような印象を受けたので首を傾げると


「お嬢さんは佐野先生の事を知っているんですか?」
「いえ…全然知らないんです。ちょっと訊きたい事があって訪ねただけなんですけど…」
「なら!なら会わない方がいいですよ!出来るなら会って欲しくない!!」
「は?!」


突然ガシッと両腕を掴まれ激しく云われた。


「聡明なお嬢さんが佐野先生なんかに会って…万が一…万が一にでも毒されでもしたら──」

「酷い云われようだなぁ」


「「!!」」


いきなり背後から聞えた声に私と男の人は驚いた。


振り向くと其処には背が高い、派手な顔立ちをした男の人が立っていた。


(わっ…すごくカッコいい人)


ほんの少し何処かで会った気がした其の男の人をマジマジと見ると、私の視線に気がついた其の人はニッコリと笑いかけた。


「わぁぁぁぁーで、でで出たっ!色情魔!!」
「えっ、色情魔?!」
「おーい、なんかすごい云われようなんだけどぉ?──君、何処の学部の学生?」
「ひぃぃぃー寄るなっ!淫らなオーラが移るぅぅぅー!!」
「あっ」


真っ青な顔をしながら男の人は私を置いて逃げて行ってしまった。


「…」


其の様子を呆然と観ていた私はいきなり現れた美形の人とふたりになってしまったのだった。


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2017.12.29 (Fri)

ひだまりロボット 8話



緑の多い何かの公共施設の様な印象を受けた。


「…ひ…広い」


私はただ呆然としていた。


開かれた大きな門の前で私は数分前からウロウロしていた。


(日曜日なのに結構人がいるんだ)


日曜日の今日、私はヒナタに『和馬と図書館で勉強してくるね』と嘘をついた。


ヒナタがちょっと変な顔つきをしていたのが気になったけれど其のまま家を出て来た。


ヒナタに嘘をついてまでやって来たのは条林大学だった。


亡くなった父が最後まで通っていた大学。


そしてヒナタが通っている大学。


此処に来れば父の事、そしてヒナタの事が何か解ると思ったのだ。


(…とはいえ)


大学という処は中々気軽に入れる雰囲気じゃないというのを痛感している私。



「──君、どうかしたの?」
「!」


いきなり声を掛けられて驚いてしまった。


慌てて振り返ると、其処には眼鏡を掛けた如何にも頭が良さそうな男の人が立っていた。


「あ…あ、あの…」
「先刻一度君の傍を通り過ぎたんだけど、まだウロウロしていたから気になって声を掛けただけであって決してナンパとかではないから」
「…はぁ」


別に私はナンパだとは思っていなかったのだけれど、あたかも私がそう思っていたかの様な云い方をされて少し首を傾げた。


「ま、まぁ思っていないならいい。で?この大学に何か用なのかな」
「あ、はい…会いたい人がいて」
「其れは誰?──もしかして君、ストーカーとかそういう類の人間じゃないよね?」
「へ?」


また思ってもみない事を云われ言葉に詰まる。


「君、そんな可愛い身なりして、実は男を追い回す様なしつこいふしだらな女だったというギャップはよして欲しいんだけど」
「…えっと…云っている意味がよく解りませんけど」
「僕は騙されない。可愛くおねだりされても惑わされない」
「…」


(どうしよう…変な人…なんだろうか?)


少し怖くなった私は今日のところは一旦帰ろうかと思った。


「で、君の会いたい人というのは誰?訊くだけ訊いてあげるけど」
「…」


タイミングが合わず帰りそびれてしまったので一応訊くだけ訊いてみる事にした。


「あの、心理科学部臨床心理学科の佐野洵教授という人に会いたいんですけど…」
「佐野先生?…どうして君が」
「あ、知っているんですか?」
「知っているとも──でもまぁあまり喋った事はないけど」
「よかった!あの、もしよかったら案内してもらえませんか?」


渡りに船──とばかりに私はこの機会を活かしたいと思った。


「部外者に先生を安易に会わせる事なんて出来る訳がないとは思わないかい?まずは君の身元や素性をはっきりしてもらわない事には通せる話も通らないのだけれど」
「あっ、そうですよね。あの、私は野々宮小春といって先日亡くなった父が此方の大学で──」
「えっ?!」


私の自己紹介の途中でいきなり其の男の人は驚きの声をあげた。


「? あの…何か」
「き、君…野々宮って…ま、まさか野々宮清次博士の──」
「父をご存知なんですか?」
「! わぁぁぁぁぁぁぁー!!」
「?!」


男の人が突然大きな声をあげて其の場で地団駄を始めたので私はただ驚くしかなかった。


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2017.12.28 (Thu)

ひだまりロボット 7話



「ん?」


休日のある日、私はヒナタのシャツにアイロンをかけていて気がついた事があった。


ヒナタは家に着の身着のままでやって来たから着替えは父の服を使用していた。


父も背が高かったからヒナタの背丈でも充分代用出来たのだ。


そして今、私がアイロンをかけているシャツはヒナタが最初に着ていたヒナタの唯一の私服。


「このシャツって…ひょっとしてかなりいいものなんじゃないのかな」


シンプルな白いシャツだけれど、ついている英語のタグの文字には見覚えがある。


(男性服のブランドってよく解らないけどこれは流石の私でも知っている)


ロボットなのにブランド服を着ているのって其れは其れですごいなぁと思ったりした。


大学で働いていると云っていたけれど、一体どんな仕事をしているのか。


(家にお金を入れてくれるのは助かるんだけど)


一緒に住むようになって一ヶ月程経つけれど、相変わらず私はヒナタの事を何も解っていないままだった。




「小春、一息つかないか」
「あ、はぁい」


台所の掃除していたヒナタがお茶を淹れてくれていた。


「わぁ…!」


お茶の隣には焼き立てであろう私の好きなプレーンクッキーが添えてあった。


「美味しそう!いただきます」
「あぁ」


今日は朝から色々と家の事を手伝っていたので、お昼ご飯を前にお腹が空いて仕方がなかった。


「ヒナタ、掃除しながらクッキー焼いていたの?」
「あぁ。そんなに手間はかからないからな」
「ふぅん…」


いつもながら手際がいいなと思った。


ヒナタが家に来てからいつも家の中はピカピカだった。


多分私ひとりだけだったらこうはいかなかったと思う。


其れに父が突然いなくなって天涯孤独になったというのに、ヒナタがいてくれたお陰で寂しさは随分和らいでいると思う。


だからつい云ってしまったのだ。


「…ヒナタがいてくれてよかったぁ」
「──え」


其れは私の何気ない呟きだったのだけれど、どうやらヒナタにも聞えていたらしい。


だって──


「……」


ヒナタの顔がありえないほど真っ赤になっていたから。


(え)


今までにこんな表情は見た事がなくて、私はヒナタの顔から目が離せないでいた。


「…何を云っている」
「……」


(なんだかヒナタが動揺している?)


ロボットなのに──?


其れに


(ロボットって赤くなるものなの?)


次から次へと湧いて出てくる疑問に私の頭の中は疑問符でいっぱいになっていた。


だけどやっぱりずっと考えていた事の疑問は核心に変わりつつある事も私は薄々気がついて来ていた。


(やっぱりヒナタはロボットなんかじゃないよね)


いくら父が優秀な科学者だったとしても、こんな人間くさいロボットを作れるはずがないと常識から考えて思ったから。


(やっぱり…ちゃんと確かめないといけない)


私はヒナタとの和みのひとときを過ごしつつ、ある決意をしていた。


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2017.12.27 (Wed)

ひだまりロボット 6話



私が住んでいるのは町工場が密集しているような下町風情溢れる処だった。


大手企業から仕事を請け負っている小さな自営業の工場が多くて、そんな地元の人々の絆はとても強いものだった。



「こんにちは、ヒナタくんいる?」
「あれ、牧村のおばさん。ヒナタなら買物に行ってるけど」
「そうなの?ざーんねん」
「そんなあからさまに残念がらないで」
「あははっ、ごめんごめん!これ、お裾分け。清次さん好きだったでしょ?柿。お供えしておいてよ」
「わっ、ありがとう!お父さん喜ぶよ」


「ちわーあっ、小春、ヒナタいるか?」
「田中のおじさん?ヒナタは買物中だけど」
「なんだよ!まぁいいや、じゃあ帰って来たらうちに来るように云っておいてくれ」
「何かあるの?」
「将棋。前回負けっ放しだったからなー今日こそギャフンと云わせてやる!」
「…あっそ」


小さなネジ工場の一人娘だった母と結婚して野々宮家に婿入りした父が亡くなってからもうじき一ヶ月が過ぎようとしていた。


父と入れ替わるようにうちにやって来た自称ロボットのヒナタは今やすっかり町の人気者になっていた。


町の人にヒナタの事を『お父さんが作ったロボットで私の面倒をみる為に家にいるんです』と紹介したらみんな一斉に『清ちゃんだったらありうる話だねぇー』と何故か納得しちゃって、其れ以来ヒナタはすぐに町内にとけ込んでしまっていた。




「小春、ただいま──ん、この柿は」
「牧村のおばさんがお父さんにって持って来たの」
「そうか。後でお礼に行かないとな」
「其れと田中のおじさんから将棋するから家に来いって」
「あぁ、解った。家事を終わらせたら少し行って来る」
「…なんかヒナタ、人気者だね」
「人気者?」


買って来た食材を冷蔵庫に仕舞いながら私の会話に付き合っているヒナタは変な顔をした。


「元々人懐っこい人の集団だから馴染むのが早いのは解るけど…まさかロボットであるヒナタに対しても人情に厚いとは思わなかったなぁ」
「其れだけ博士の人柄や仕事に対して住民其々が感銘を受けていたんじゃないのか」
「え?」
「博士の日頃の行いが素晴らしかった──という事だ」
「…」


確かに父は町の人に優しかった。


頼まれ事は積極的に引き受けていたし、人付き合いも満遍なく平等に広く展開していた様に思えた。


愉しい事も辛い事も、自分の事の様に受け入れていた。


(そんなお父さん絡みだからヒナタの存在も受け入れられたって事なのかな)


「…」


(多分其ればかりじゃないと思うけれど)


ヒナタ自身の態度…というか人格…ロボット格?


そういうのも大きく影響していると思う。


「──小春」
「わっ」


いきなり目の前にヒナタの顔があったから驚いて大きな声を出してしまった。


「どうした」
「あ、ご、ごめん…いきなりヒナタの顔が近かったから…」
「驚かせたか」
「ううん、ヒナタは悪くないから」
「今から田中家に行って来る」
「うん、行ってらっしゃい」


(あぁービックリした)


慣れたつもりでいたけれど、やっぱりまだ気が抜けた状態で近づかれると驚いてしまう。


なまじヒナタが私の好きな男性のタイプに近いから困ったものだ。


(これってお父さんがわざとそういう風に作ったって事なのかな?)


好みのタイプと一緒にいる時間が増えれば増えるほどに其の存在は気になるものになって来る──

其れは相手が人間なら当たり前の事だけれど…


(ロボットでも当てはまるんだろうか?)


そんな事をふと考えた私だった。


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