2017.11.30 (Thu)

秘密の穴園 19話



私は【穴園】という苗字が大嫌いだった。


其の苗字を率いての【望】という名前も嫌いだった。


だから私は早く結婚をして苗字を変えたいと思った。


名前の事で馬鹿にされない様に人よりも優秀であれと努力して来た。


素顔を偽りつつ、私は静かに探して来た。


私にふさわしい結婚相手を。


私のコンプレックスは結婚でしか克服出来ないと、固くそう思い込んで来たのだ──




「…何…其れ」


高野に私の秘密を話し終えた第一声が其れだった。


「は?何其れって、どういう意味よ」
「みょ、苗字が嫌いだから…誰彼構わず結婚したいだなんて」
「誰彼じゃないわよ。ちゃんとした苗字で経済力のある大人限定よ」
「…其れが如月先生って訳?」
「!」


少し声のトーンが低くなった高野に少しだけ怯んだ。


「そ、そうよ。私の周りにいる男では先生が一番条件に当てはまっているから」
「其れで…先生と結婚するために色々謀(はかりごと)をしているの?」
「ええ、そうよ」
「…じゃあ、望さんが云っていたセックスの場数を増やす目的で僕としているっていうのも」
「勿論結婚するために必要だと思ったから。いざとなったら目当ての男を体で落とそうと思っている」
「っ!」


俯き加減で話していた高野がやおら顔を上げ、再び私をベッドへと押し倒した。


「ちょ、何──」
「そんな…そんな馬鹿らしい理由で結婚しようだなんて!しかも其のための練習台に僕と」
「私にとっては馬鹿らしい理由じゃない!」
「!」


高野に掴まれている腕が酷く痛んだ。


力一杯握られていて骨が軋む痛さだ。


この行為が高野の激昂具合を表している気がした。


だけどだからといって怯む私じゃない。


「私は最初から云っていた。あんたとは契約でセックスしているって」
「…」
「私とセックスする事であんたが私に好意を持ったのはあんたの勝手でしょ?私には関係がない」
「…ちが」
「何」
「違…う、僕は最初から…望さんの事を…」
「…」


掴んでいた掌の力が少し緩んだ。


其の隙に私は高野を押しやってベッドから離れた。


「──高野」
「…」


名前を呼んだけれど高野から返事はなかった。


なかったけれど私は勝手に話を続けた。


「私はあんたと付き合う気はない。だけど…恋愛感情を抜きにしたセックスの相手にならいつでもなってあげるわ」
「…」
「だけどもし、私と如月先生の間を邪魔しようなんて考えたら──其の時は私にも考えがあるから」
「…」
「じゃあね」


私は云うだけ云って高野を部屋に残して出て行った。


最後まで高野の顔は見えなかった。


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2017.11.29 (Wed)

秘密の穴園 18話



身なりを整えた私は、項垂れたままの高野を放って部屋を出て行こうとした。


だけど──


「待って!」
「!」


いきなり手首を掴まれ、後ろに引っ張られて其のまままたベッドに押し倒された。


「何よ、まだ何かあるの?」
「…きだ」
「え?」
「僕…望さんが好きだ」
「!」


いきなりの告白で驚いた。


でも其の驚きは直ぐに収まる。


「望さんが好きなんだ…だから僕と体だけじゃなく、ちゃんと付き合っ」
「──無理」
「え」


高野の言葉を遮ってキッパリと云い放つ。

そう、答えは決まっているのだ。


「私、高野とは付き合わない」
「な、なんで…僕の事…き、嫌いなの?!」
「好きとか嫌いとかであんたとの事を考えた事がない」
「は?」
「だから高野の事は恋愛対象として見た事がないって云っているの」
「…そ、そんな…だって僕たち何度もセックスしているし…女の子って好きでもない相手にそんなに何度も──」
「普通の女がどうかは知らないけれど、私は出来るわ。好きでもない男とのセックス」
「!」


高野の顔色が一気に青くなった。


だけど私は構わずに続ける。


「兎に角私は結婚相手になる男としか付き合わない」
「えっ…け、結婚相手って…」
「今の処、如月先生って事になるのかな」
「! 望さん、如月先生の事、本気で好きなの?」


高野にしては珍しく語気を荒げたからほんの少しだけ驚いた。


「…別に本気で好きなのかは関係ない。ただ結婚したいだけ」
「だ、だから其れは如月先生の事が好きだからだよね?」
「違うわ。如月先生にしても気持ちの上では高野と同じぐらいの感情しか持ち合わせていない」
「?! ど…どういう意味…?望さんの云っている意味、よく解らない」
「…」


此処まで食い下がれたら正直に本心を話すしかないかと思った。


(本当の私はもうバレバレなんだし…いいか)


今此処で全てを話して、仮に其れをネタに何か強請られたら今度こそ私は反撃に出ようと思った。


(世の中は品行方正な女が有利に動く様になっているのよ)


心の中にはそんな驕(おご)りがあった。


「いいわ。私の本当の秘密、あんたに教えてあげる」
「!」
「話してあげるけれど其れを他人に、ましてや如月先生に吹聴するようなら私にも考えがあるからね」
「…い、云わないよ…好きな子の秘密を他の人なんかに」
「そう」


ほんの少し高野が高揚した表情で私を押し倒していた腕を緩め、上体を起こしてくれた。


(なんか解りやすい)


私の秘密を自分にだけ話してくれるだろう今のこの状況が嬉しいのか、高野は私に交際の申し出を断られたショックなど微塵も感じさせない程に嬉しそうにしていた。


やがて其の雰囲気は直ぐに不穏なものになるのだと今は知る由もなかったのだけれど──


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2017.11.28 (Tue)

秘密の穴園 17話



大きな家の離れの部屋に連れ込まれた。


部屋に入って早々ベッドに押し倒され、素早く着衣を肌蹴させられた。


「ちょ、ちょっと…がっつき過ぎ」
「…」
「ねぇ、訊いてい──あっ」


話をしている私に構わず、高野は露わになった私の胸に唇を這わせた。


「あ、あん…んっ」
「…」


初めの頃に比べたら上達した様に思える舌遣いに身を悶えさせる。


「はぁ…んっ…ん」
「…」


ただ黙々と私のありとあらゆる場所を舐め回し、手慣れた様子でゴムを装着し一気に私の中を貫いた。


「あ!あぁぁっ、い、痛っ…高野っ」
「はぁはぁ…んっ…ん」
「…」


私の云っている事を聞いていないかの様に、黙々と出し挿入れをするために激しく腰を振り続ける。


「あ…あっあっ…んっ」
「はぁはぁはぁ…あっ───」


打ち付けられていた腰はごく短時間に動きを止めた。


「あ…あ…」


埋めぎ声にも似た息継ぎをしながらブルッと体を震わせた高野の様子で(イッたんだな)と思った。


覆いかぶさる様に抱きしめられ、私の耳元で浅い息を高野は吐き続けた。


(…またイケなかった)


絶頂というか、エクスタシーというか…


よく漫画や小説にあるような気持ち良さを感じた事がない私は、やっぱり今日も中途半端なままの気持ちで行為を終わらせたのだった。






「…ご、ごめんね」
「え」


軽く身支度をしている最中にいきなり高野が喋り始めた。


「今日…望さんの後をずっとつけていた」
「…」
「数日前から…何か如月先生と進展があったような素振りを望さんがしていたから…気になってて…」
「先生との約束の日が今日だったってなんで解ったの?」
「其れは…土曜日…昨日もずっと…望さんの家の近くで…見張ってて」
「ちょっ…!あんたなんで私の家、知っているのよ」
「一度下校の時、後をつけた事があって…」
「……あんた…本当にストーカーだったのね」


私は呆れ過ぎて怒るに怒れなかった。


普通ならこんな行為をされて気持ち悪い──と思うところなんだろうけれど、セックスの練習相手だと思うと其の気持ち悪さも仕方がないのかとか思ってしまっているところがあった。


(私…もしかして高野の異常な行動パターンに慣れて来てしまっているの?!)


一瞬ゾクッとしながらも話を続ける高野に耳を傾けた。


「望さんが…マンションに入って行ったのを見たらなんだかやきもきして…如月先生相手に…セックスしているんじゃないかって思ったら僕…僕…」
「…あのさ、ひとつ訊きたいんだけど」
「…」
「仮に私が如月先生とセックスしたからって其れがどうして高野に関係してくるの?」
「…」
「私、云ったよね?高野とは体だけの関係だって。あんたは私の秘密を黙っている代わりに私を抱いて、私は高野をセックスの練習台にしているって事、解っているはずでしょ?」
「…」
「あんたも其れでいいって云っていた。やりたい盛りのあんたと経験の場数を増やしたい私。お互いに利害は一致しているはずよ」
「…」
「私とあんたの間には体の関係しかない。其処に愛とか恋人とかっていう単語は含まれないのよ」
…そんな

最後に呟く様に云って項垂れた高野は其れから数分、顔を上げる事がなかった。


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2017.11.27 (Mon)

秘密の穴園 16話



高野はずっと無言のまま私の手を握って離さず、其のまま電車に乗り、私が降りた事のない駅で降りた。


「ねぇ、何処に行くの?──というかあんた、なんであんな処にいたの?」
「…」
「まさかとは思うけれど…私の後をつけていたんじゃないわよね?」
「…」
「そんなストーカーみたいな真似、しないわよね?!」
「…」
「ねぇ」
「…」
「高野!」
「…」


(もう!先刻からずっと質問しているのに答えないんだから)


高野のこういう処はよく解らない。


気弱なくせして変な所で頑固というか頑なというか。


(ホテルに行くって訳じゃないよね)


方向的にも違うし、なんだか段々住宅地に入って来ている。


訊きたい事は山ほどあったけれど、相手がこうだから云うだけ無駄の様な気がして私は早々に諦めて、渋々高野の後をついて行った。




ガタン


ギィィィー


「!」


大きな門を開ける音に驚き、中に入って更に驚いた。


(おっきい家っ!)


ずっと道沿いに続いていた長いコンクリートの白い壁で解らなかったけれど、純和風の大きな家が目に飛び込んで来た。


大きな家をぐるりと取り囲む様に周りには広い日本庭園が広がっていた。


「な、何よ、此処何処?」
「──僕の家」
「えっ」
「僕の家でなら…いいって云ったよね、望さん」
「!」

不意打ちで『望』と呼ばれると未だに胸が高鳴る。


「…セックスするって事?」
「したい──ダメ?」
「…」


なんだろう…


この感じ。


(この男はただ単にセックスがしたいだけで私に付きまとっているだけ)


頻繁に求められる事について考えるところがあったはずだったのに…


今度求められたら一度断ってやろう──そう思っていたのに…


「ねぇ、ダメ…なの?」
「…いいわよ」


こうやって応じてしまうのは、きっと回数をこなして経験豊富になるための私側の都合だ。


そう、きっと其れだけの事なのだ。

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2017.11.26 (Sun)

秘密の穴園 15話



「はい、今日は此処まで」
「…」


絵のモデルにと頼まれやって来た先生の仕事場のマンション。


午後から休憩をはさみながら約2時間。


ジッとしているのは中々の重労働だった。


「とりあえず下書きは大まかに描けたから──ホラ」
「…」


『ホラ』と云われて見せてもらったキャンバスにはよく解らない線が沢山書き込まれていた。


「これ、私ですか?」
「んーまだ君ではない何か…だね」
「? 私を描いているんですよね?」
「そうだね、君を描いている」
「なのに私ではないんですか?」
「──まだ、ね」
「…」


本当芸術家って解らないと思った。


「今度は再来週の日曜日。また同じ時間に来てくれる?」
「来週じゃないんですか?」
「来週の日曜は野暮用があってね」
「そうですか。では再来週に」


靴を履き、玄関を出ようとドアノブに手を掛けた瞬間


「穴園さん」
「はい── ?!」


振り向き様に頬にキスされた。


「っ、何するんですか!」
「え、何って頬っぺにチューだけど」
「生徒にしていい行為とは思いません」
「口じゃない、頬でもダメ?」
「ダ、ダメです」
「あははっ、そっか、ダメか。じゃあもうしないよ」
「…」


私は慌ててドアを開け外に飛び出した。



驚くほどに動揺している私がいた。


(な、なんで赤くなっているのよ、私ってば!)


キスよりもっと凄い経験だってしているのに…


たかがキスで…


しかも頬なんかで──


(ドキドキするな!)


いざとなったら肉体関係に持ち込んで妊娠してしまえば結婚への道は近づく──そんな考えをしていた私なのに…


其れは思った以上に難しい事なのかも知れないと、少し思い始めた私だった。




先生のマンションを出て、駅の方へと向かって歩いていると前方に見知った人影があった。


「──高野?」
「…」


其れは紛れもなく高野だった。


私服を着ていたのでいつもとイメージは違っていたけれど、相変わらずひょろ長い上背ともさっとした髪に度のきつい眼鏡。


こんな風体の同級生を私はひとりしか知らない。


無言で私に近づいて来た高野はギュッと私の手を掴むと歩き出したのだった。


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