2017.09.30 (Sat)

Bitter&Sweet 34話



瞬く間に一週間は過ぎ、あっという間にいけばな教室のある当日になった。

「確か今日は教室だったな」
「はい、午後から行って来ます」
「ん」

朝食の席で交わす源治さんとの会話。

「奥様、お教室には着物で行かれるのですか?」

お茶を淹れながら澄子さんも話に入って来た。

「いえ、そんなに本格的な教室じゃないんです。講師の先生も洋服でしたし」
「しかし着物を着ていく機会もあるだろう」
「えぇ…そうですね」

そういえば年に何回か発表会みたいなものがあって、其の時は着物を着ていく様な事がパンフレットに書かれていたのを思い出した。

「何枚かあつらえるといい」
「え」
「そうですね、また篠田屋さんを呼んでおきましょう」
「そんな、気が早いです!其処まで続くかどうかも怪しいですし…」
「着物なんてあればあったで何かの時に役立つだろう」
「…はぁ」
「4~5枚程作っておけ」
「多過ぎです!」

和やかな朝食の席は、緊張していた私の心を程よく解してくれた。

(今日…彩奈さんは何を話すんだろう)

まだ少しだけドキドキしている胸中だったけれど、頑張ろうと思った私だった。





「どうも初めまして、北原彩奈です」

「…」

教室に来て私は惚けっ放しだった。

カリスマ主婦がいけばなの講師をするという事で、雑誌の記者が何人かいたのにも驚いたし、観覧の人の多さにも驚いた。

でも一番驚いたのは艶やかな着物姿の彩奈さんの美しさだった。

「流石に綺麗よね」
「見て、あのネイル。程よく品があって素敵」

「…」

密やかに聞こえる称賛の声に私の気合に満ちた心が萎んで行くようだった。

(うぅ…やっぱり凄い人だ…彩奈さんって)

彩奈さんが動く度にたかれるフラッシュの光にも負けない程に輝いている彩奈さんを、ただただ羨望の眼差しで見ているだけの私だった。




「お待たせしました」

講座が終わって人気の無くなった教室に着物から洋服に着替えた彩奈さんが現れた。

「場所を移動してもいいかしら?」
「はい」

相変わらず凛としていて其の所作の美しさに見惚れてしまう。

彩奈さんの後をついて行くと教室の地下駐車場まで来た。

「どうぞ、乗って」
「お、お邪魔します」

真っ赤なスポーツカーは彩奈さんのイメージに合っていて、女としてとことん差が広がって行く惨めさに心が折れそうだった。


軽快に走り出した車はさほど遠くない場所で止まった。

「…此処は」
「わたしの友人のお店」

外見はごく普通の住宅の様だった。

カランと涼やかな音を立てて玄関ドアが開いた。

「あら、いらっしゃい」
「お邪魔するわ」

お店の人らしき人と挨拶をしながら彩奈さんは中に入って行った。

「いらっしゃいませ」
「あ、はい、お邪魔します」
「ふふっ、どうもご丁寧に」
「…」

お店の人に微笑まれて少し恥ずかしかった。

案内されたのは白を基調とした真四角の個室だった。

「オーダーどうする?」
「んー時間が時間だから…ケーキセットでいいかしら?」
「あ、私は何でも」
「じゃあいつものお願い」
「了解」

一体何屋さんなんだろうと思った。

其れほどまでに装飾は無機質で、余分な飾りつけのない部屋だった。

「此処、落ち着くでしょう」
「…はい」
「完全予約制、しかも一見様お断りで昼間はカフェ、夜はバーになるの。知る人ぞ知る店だから内緒の話をするにはもってこいの場所なのよ」
「内緒の話…」

これからされる話は内緒話なのだろうか?と思った私だった。

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2017.09.29 (Fri)

Bitter&Sweet 33話



ポチャンと天井の滴が湯船のお湯に落ちた。

「──ふぅ」
「…」

これもいつもの恒例のセックス後のお風呂の時間。

私は源治さんに背中を預けてゆったりとお湯に浸かっている。

「あぁ…極楽だ」
「…ねぇ、源治さん」
「ん」
「源治さんって…いつから私の事を好きだったんですか?」
「!」

其の瞬間、バシャンと大きな水音が響いた。

(明らかに動揺している)

「な、何を、突然…」
「だって…よく考えたら其処ら辺の事って訊いていなかったなぁと思って」

背中を源治さんに預けたまま私は喋る。

面と向かっては訊けない事を、今のこの状態なら訊ける気がしたのだ。

「そ、そんな事…忘れた」
「! 忘れたの?!」

思わず後ろを振り返って源治さんの顔を見る。

「え…」
「見るな!」

其処には真っ赤になっている源治さんがいた。

「源治さん…逆上せたの?」
「~~そうだ」
「あっ」

私の体を少し避けて源治さんは湯船から立ち上がって其のまま浴室を出て行ってしまった。

(えぇ、逆上せたって…入ってからまだ3分も経っていないよ?!)

あの赤さは照れ──なんじゃないのだろうか?

私は其のままひとり湯船に浸かって色々考える。

(確か源治さんが彩奈さんと結婚したのって32の時だって澄子さん、云っていたよね?)

源治さんが32歳の時、私は10歳。

(うーん、そう考えるとやっぱり22歳差って大きいな)

そして離婚したのが一年後──

わずか一年足らずの結婚生活に何があったのだろう?

源治さんが私たち家族を援助してくれた頃は、私が高校に上がる前だから…15歳。

源治さんは37歳。

(援助する其の頃に何処かで私を見掛けたのかな?)

母に会った時に訊いた話によると、私は小さい時に源治さんに会った事があるらしいけれど其の頃の源治さん絡みの記憶は私にはなかったし、勿論15歳以降の私の中でも源治さんと会ったという記憶はない。

──となると、やはり年頃になった私を源治さんは何処かで見初めて好きになってくれた、と考えるのが妥当なのかな?

(…なんだかそう考えるとくすぐったいな)

私の知らない処で私の事を好きになってくれていた人がいただなんて。

しかも強引な手段を使って手に入れる位に好きだなんて。

自分の中でなんとなく道筋を立てると、益々源治さんの事を愛おしく思えてしまって堪らなくなる。

(あぁ、無性に源治さんをギュッとしたい)

そう思った私はそそくさと湯船から出て、源治さんの元に急いだのだった。

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2017.09.28 (Thu)

Bitter&Sweet 32話



「どうした」
「えっ」
「また何か考え事か」
「…いえ…あっ」

源治さんと合流した私は其のまま源治さんお勧めの料理屋さんで美味しい食事を頂いてから帰宅した。

そしていつもの様に濃厚な夜の営みの最中──

「今日は…少し乾いているな」
「え…そんな事──ひゃっ!」

云い終わる前に源治さんは私の秘所を舐め出した。

「ふわっ…あっ…あぁん…あん」

ペチャペチャと粘膜を擦りつける音とチュッと吸い付く音が続き、中からトロッと愛液が湧いて来る感覚があった。

「あぁん!げ、源治さん…も、もう…頂戴…」
「──ふっ」
「…はぁ…はぁ」

強請る様に甘い声を出すと源治さんは嬉しそうな顔をした。

「由梨子…堪らない、其の顔」
「…顔」

私の顔って…

別に特別可愛くないよね?

(彩奈さん…)

今日初めて見た生の彩奈さんは本当にうっとりするほど美しかった。

あんなに美しい人なのにどうして源治さんは離婚なんてしたのだろう。

「由梨子」
「! はぅ、あっあっあぁぁぁぁぁっ」

考え事を吹き飛ばすかの様な強く深い挿入にビリビリと体が痺れた。

「あ、あっ、あふっ…げ、源治…さん」
「由梨子…由梨子」

ガンガンと子宮を突き上げるかの様な律動に気を失いそうだった。

源治さんの先が私の奥底、子宮の入り口をギュッギュッと小刻みに擦りつける感触が脳天を突き抜けるほどに気持ち良かった。

「ふぁ…あっあっあっあぁぁ、あっ」
「ふっ…ん、んっ」

開きっぱなしの口からはだらしがなく唾液が流れ落ちて、時々其れを源治さんが舌ですくってくれた。

「由梨子…由梨子…あぁ…気持ちいい…んっ」
「あ、あっ…わ、私…もっ、はぁん!あんあんあんあん」

もう何も考えられなかった。

激しく擦られ、捲られ、突かれて、まともな思考は出来ない状態だった。

ただただ源治さんから与えられる悦楽に必死について行くだけで…

其の果てにある絶頂を味わいたくて、ひたすら源治さんの動きに合わせて腰をくねらすのだった。

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2017.09.27 (Wed)

Bitter&Sweet 31話



(え…あれ?この人…)

電話をしている私をジッと見ている其の人は、なんと先刻話に出ていたカリスマ主婦の北原彩奈、其の人だった。

『おい、由梨子?訊いているか』
「あ!…はい、訊いています」
『だから駅に着いたら其処で待っていろ、迎えに行くから』
「はい、解りました」

電話は源治さんからで、夕方以降の仕事が先方の都合でキャンセルになったために今夜は外で食事をしようというお誘いだった。

通話終了ボタンを押して、背けていた顔を北原さんの方へ向けた。

すると

「──失礼ですけれどお名前、窺ってもよろしいですか?」
「え、名前?私の、ですか?」
「えぇ」
「伊志嶺由梨子です」
「…伊志嶺」

其の瞬間、北原さんは美しい顔を酷く歪ませた。

「あの…」
「もしかして…伊志嶺源治の奥様ですか?」
「!」
「源治──なんて珍しい名前が聞こえたものですからそう思ったのですが…違いますか?」
「…いえ…はい、伊志嶺源治の…妻です」
「…」

北原さんは益々顔を歪ませた──と思ったけれど、直ぐに能面の様に表情のない顔を私に向けた。

「突然すみませんでした。わたし、伊志嶺源治の前の妻の彩奈です」
「えっ!」

其れはまさに青天の霹靂だった。

脳天から雷が落ちたかの様な衝撃を私は受けた。

「まさか──とは思ったけれど…あなた、おいくつかしら」
「…20歳、です」
「……」

(えぇっ!物凄く怖い顔になってる!!)

紙面では美しい笑顔しか観た事がなかったら、まさかカリスマ主婦がこんな顔をする事があるなんて思ってもみなかった。

「あなた…源治に騙されて結婚なさった?」
「え」
「何か政略結婚的な感じで、無理やり結婚させられたんじゃないかしら」
「…どうして」
「此方が質問をしているのよ、質問には答えで返して下さらない?!」
「!」

其の激しい剣幕に行き交う人も何事かと私たちを見た。

「──失礼、源治の事になるとつい…荒ぶってしまっていけないわ」
「い、いえ…」

(ふぁ…人ってやっぱり見かけによらないんだ)

私は源治さんで見かけと中身にギャップがある人には随分慣れているつもりなのであまり大げさに驚きはしなかったけれど。

(この人が…源治さんの前の奥さん)

噂通りの華やかで美しい人だった事に納得しながらも、自分との違い過ぎる容姿に落ち込んだ。

彩奈さんはチラッと時計を見て「時間切れだわ」と呟きながら改めて私と向き合った。

「あなた──ゆりこさんと云ったかしら」
「はい…」
「お時間、作ってくださらない?」
「時間?」
「わたし、来週此方の教室で講師をする事になっているの。其れが終わってから少しだけお話、出来ないかしら」
「あ、はい…構いません」
「そう──じゃあ、其の様に」

彩奈さんは一方的に其れだけを伝えるとそそくさと其の場を立ち去った。

「…」

──まさか…まさか源治さんの前の奥さんが…

(あの北原彩奈だったなんて!)

私は色々驚き過ぎて、しばらく其の場に茫然と立ち尽くしてしまったのだった。

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2017.09.26 (Tue)

Bitter&Sweet 30話



「本日はいけばな体験教室にお越しいただきましてありがとうございます」

源治さんからお赦しを得た華道教室へはとりあえず体験教室から始める事にした。

屋敷からわりと近場にある其の教室は、いけばな素人の私でも名前ぐらいは聞いた事のある有名な流派のスクールだった。

時間が平日の昼間──という事もあって、あまり同世代の人はいないように見受けられた。

最初に今日扱う花について勉強をした。

勉強なんて短大を卒業して以来だったから少し新鮮な気持ちになった。

元々花は好きだったし、何かを新しく知る事、知識を吸収する事が好きだった私は、あっという間にいけばなに興味を惹かれてしまったのだった。

(すごくセンスを問われるけれど、愉しいかも)


2時間の体験教室はあっという間に終わってしまった。

帰り支度を済ませ、教室を出ようとした処で何人かで固まっている人達の話が聞こえた。

「北原彩奈が此方の教室でゲスト講師をされるんですって」
「まぁ、本当?!其れは愉しみね」

(…あやな?)

其れは私にとって酷く印象的な名前だった。

(あ、でも北原彩奈って確か今話題のカリスマ主婦って人だっけ?)

結婚してから読む様になった主婦雑誌によく載っている華やかなカリスマ主婦──其れが件の北原 彩奈(きたはら あやな)だった。

(確かなんとかってサッカー選手の奥さんなんだよね)

うろ覚えの情報で申し訳ないが、どうやら其のカリスマ主婦である北原彩奈が来週この教室で講習会を開くという話らしい。

(凄いなぁ…来週、か)

体験教室はこの日限りの事だったので、もし来週も通うという事になると本格的に入会しなければいけない。

(なんだかいけばな愉しそうだし…思い切って続けてみようかな)

そう思った私は其の足で事務所に寄って行った。



「お待たせして申し訳ありません」
「いえ」

入会に必要な書類や持ち物などの確認に訪れた事務所だったけれど、先客がいたらしく事務所内は慌ただしくしていた。

「来週お越しになる時で結構ですので、此方の入会申し込みの書類と受講料の銀行引き落とし手続きの書類、あと──」
「はい」

色々な手続きがいるのだなと思いながら話を訊いた。

「其れではどうぞよろしくお願いします」
「此方こそよろしくお願いします」

やっと説明を終えて事務所を出る。

「…ふぅ」

一息ついて玄関に出る廊下を歩いていた。

するとマナーモードにしていた携帯が鞄のポケットの中で震え出したので慌てて取り出した。

丁度其の時、後方からハイヒールの音が聞こえたので歩行の邪魔にならない様に廊下の端に寄って電話に出た。

「はい──あ、源治さん?」

私が通話した瞬間、すれ違った人からふんわりといい匂いがしたから思わず其方を見てしまった。

すると

(えっ)

其処には何処かで見た事のある華やかで美しい人が何ともいえない顔をして此方を見ていたのだった。

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