2017.07.31 (Mon)

不完全ラヴァーズ 25話



私は怖かった。

過去に受けた酷い恋愛経験からある事に関してトラウマを抱える様になった。

強い束縛からの拘束、暴力。

私の気持ちを無視して甚振り支配しようとする事に対して酷い恐怖心が芽生えてしまうのだ。


そして一度其の恐怖心を抱いてしまった相手とはもう──




「えぇっ!いつの間にそんな話にっ」
「…」

突然泣きながら電話して来た私に驚きつつも温かく自宅に招いてくれた円加は、先刻から驚きの声しか発しなかった。

岸岡さんと別れた其の日の内に円加に泣きの電話を入れて、そして仕事を終えた円加の家に転がり込んでいた。

「あの日、わたしと飲みに行った夜に再会したタイミングといい…告白されたシチュエーションといい…話を訊く限りいい男の様なんだけど…」
「実際…いい男だよ、岸岡さんは」
「…なのに別れたの?」
「…ぅん」
「たった一度嫉妬されて……えっちなお仕置きされちゃったから?」
「……ぅん」
「そんな…其れはすずの事を本当に好きだから──」
「……先輩の事…思い出しちゃって…」
「──え」

円加は私の『先輩』という言葉を訊いて押し黙った。

「…思い出したら…もぅ…怖くなって…微かにあった好きっていう気持ちも…消えて無くなっちゃった…」
「…」
「本当は…本当は最初から解っていたのかも知れない」
「…」
「好きな人だっていうのに…彼氏になったっていうのに…私の全てを晒せ出せなかった時点で…本当は私…心の何処かでは彼の事を受け入れていなかったんじゃないかって…」
「…すず」

絞り出すように話す私を円加がギュッと抱きしめてくれた。

「~~ふぇ…え…えんちゃん~~」
「よしよし、泣きなさい」
「ふぅっ…うっ、うぅ」
「思いっきり泣いて…今日までのすずは明日からのすずの一部として吸収しちゃおう」
「…ぅん…うん、うん…」


私と円加が知り合うきっかけとなった自己啓発セミナーは当時私が患っていた心の病を診てくれた精神科の先生が紹介してくれたものだった。

其の時の私は今では想像がつかない程に心を病んでいて、酷いトラウマと戦っていた。

そんな私を救ってくれたのが円加という存在だった。

私が陥ったトラウマの原因を知り、共に克服するために頑張った。

同じ様な心の傷を持つ者同士、其の絆はとても深いものだと思っている。

雑誌の読者モデルになったのも、スカウトされてどうしようかと悩んでいた私に円加の『折角手に入れた体なんだから大いに使うといい』と変なおススメをしてくれたおかげだった。

コンプレックスの塊だった体を使って世間を見返せばいいと勇気づけてくれたおかげで私のコンプレックスは随分薄くなって来た様に思えるけれど…

(でも…まだ今一歩の処で…曝け出す事が出来ないでいる)


『思いっきり泣いて…今日までのすずは明日からのすずの一部として吸収しちゃおう』


今は円加の其の言葉通り、泣いて泣いて…

弱い私を少しでも浄化したいなと思ったのだった。


0a7.jpg

★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチいただけると色んな意味で励みになります♪

00:00  |  ◆不完全ラヴァーズ  |  EDIT  |  Top↑

2017.07.30 (Sun)

不完全ラヴァーズ 24話



彼はありのままの私を好きだと云ってくれた人だった。

其のままの君でいいんだ、其のままの君が好きなんだと私にとっては奇跡の様な告白をしてくれた人だった。

だから私は彼の事が本当に好きかどうか解らないまま彼の告白を受け入れてしまった。

彼は告白の言葉通りありのままの私を愛してくれた。

交際は順調だった。

彼によって私は女として生まれた事の悦びを存分に与えられた。

幸せだった。

とても幸せだった──のに

順調だった付き合いが徐々に瓦解して行くのは案外早かった──






「──今、なんて云った?」
「…」
「寿々子」
「…ごめんなさい」
「…」


初めてのお泊まりは私から彼氏を奪う哀しい時間となった。

何故あそこで課長に逢ってしまったのだろう。

何故課長と立ち話をしている姿を見られたのだろう。

あのタイミングで来たり喋ったり見られたりしなかったらこんな事にはならなかっただろうか。

──ううん、其れは違う

遅かれ早かれこういう事態にはなっていたんだろうと思う。

交際期間は決して長くはなかったけれど、岸岡さんの本性をこのままずっと気が付かないでもっと深く繋がってしまっていたらと考えると怖くなった。


「私は…岸岡さんの事が好き、でした」
「…もう過去形なのかい」
「好き…です」
「云い直さなくてもいいよ」
「岸岡さんが些細な事でも嫉妬するというのは其れだけ私の事を好きで…いてくれるから、だと思うんですけど」
「そうだよ。俺は君の事を本当に愛している。愛しているからこそ俺以外の男に笑いかけて話なんてして欲しくない」
「…でも、岸岡さん以外の男性と全く話さないで生活する事は難しいです」
「其れは解っている。ただ俺の見える処では止めて欲しいというだけで」
「…」
「本音を云えば直ぐにでも仕事を辞めさせて此処に閉じ込めておきたいとさえ思っている」
「…」
「其れをギリギリの処で抑えているんだ。だけど…其の抑制がちょっとした事で溢れ出して…今日みたいに君に酷い仕打ちを…」
「…」
「だけどもう絶対にしない!男と喋るなとも云わない!だから別れるなんて云わないでくれ!」
「…」
「たった一度の事じゃないか、これからもう絶対にしないから!だから…赦してくれ、寿々子っ」
「…」

岸岡さんは座っている私に縋り付いて来た。

(あぁ…またこういう流れに…)

不意に蘇る過去の記憶。

私は岸岡さんみたいな人をとても良く知っている。

(こういう人はみんな同じだ)

過去から学んだ記憶が必死に私に取り繕っている岸岡さんの行動を酷く滑稽に映し出してしまっていたのだった。


0a7.jpg

★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチいただけると色んな意味で励みになります♪

00:00  |  ◆不完全ラヴァーズ  |  EDIT  |  Top↑

2017.07.29 (Sat)

不完全ラヴァーズ 23話



玩具で二度イかされ、やっと両手の組紐と両足の固定が解かれた私はテーブルの上からベッドの上に移された。


「はぁん、あんあんあんっ」
「ふぅん…凄い…もう締めているじゃないか」

そして玩具が抜かれた私の中には岸岡さんのモノがズップリ埋め込まれ激しい律動が繰り返された。

「あぁぁん、イク…もぅ…イッちゃうぅ~~!」
「まだだ、まだイクなよ」
「っ!」

既に二回イっていた私の中は少しの振動でも敏感に伝わり、直ぐにヒクついた。

其の度に岸岡さんは私の中からモノを引き抜いて私が快感に堕ちる寸止めを繰り返した。

「ははっ…ヒクついているのが丸見えだね」
「や…ぁ…早く…早く…挿入れてぇ…」
「寿々子はお強請りが下手だね、そんなんじゃあげられないよ」
「うぅ…お、お願いです…岸岡さんの…おっきくて太いの…私の中に挿入れてかき混ぜてくださいっ」
「…そう、そんなに俺のが欲しいんだね」
「ふっ…ぅっ」
「淫乱だねぇ、寿々子は」
「…っ」
「でもまぁ、ちゃんとお強請り出来たご褒美はあげないとね」
「あぁっ!」

グッと持ち上げられた太腿の間を縫ってズブズブッとモノが沈み込んだ。

「ははっ…凄っ…挿入れただけだよ、そんなに絡めるなよ」
「あぁん、ふぅ…ん、んっ」

待ち望んでいたモノを与えられた私の中は歓喜に満ち溢れあっという間に岸岡さんのモノを締め上げた。


「あぁぁぁぁ───っ!」


自然と甲高い声が出る。

だらしがなく涎を垂らし脳天に突き上がる快感に悶え、下半身をガクガクと震わせた。

(こんなの…初めてだ…)

哀しい事に酷く甚振られ心は虚無感で溢れているというのに何故か体は充足感に満ちていたのだった。







「無理させたね、ごめんよ」
「…」

吉岡さんが云う処のお仕置きの時間が終わり、ふたりして疲れ切った体をベッドに晒していた。

「俺…自分でもこんなに嫉妬深いとは思わなかった」
「…」
「寿々子が只の上司だって云ってるのに…どうしても其れを素直に受け入れられなくて…俺以外の男と話しているのを目の当たりにするとどうしても厭な気持ちが抑えられなくて」
「…」

岸岡さんは私にした仕打ちを一生懸命謝って、そして素直に『嫉妬した』と云ってくれた。

一瞬の負の感情で我を忘れてしまった原因の大元には私の事が好き過ぎて──という理由がある事は解っている。

解っているけれど、其れを【嬉しい】とは思えない私。


だって私は…


私の事を好き過ぎてほんの些細な事でも激昂に駆られ、私を酷く甚振る人の事をよく知っていたのだから──


0a7.jpg

★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチいただけると色んな意味で励みになります♪

00:00  |  ◆不完全ラヴァーズ  |  EDIT  |  Top↑

2017.07.28 (Fri)

不完全ラヴァーズ 22話



外で食事を済ませ、岸岡さんのマンションに着いてから、岸岡さんが課長に対して嫉妬した──?と思った私の考えはあながち間違いではなかったのだという事を思い知らされた。 


「やぁ…!お、お願い…ほ、解いてぇ」
「ふっ…何云ってるの寿々子。いつもより感じている癖に」
「はぅ!んっ…あぁんっ」

岸岡さんの広いマンションの一室には明らかに私とのセックスで使うだろうと思われる様々な衣装や玩具、そして何故か部屋全体に大きな鏡が幾つも置かれていた。

「寿々子…ほら、見てごらん」
「んんっ」
「君のアソコ、丸見えだろう?」
「~~~」

襦袢姿の私は両手を天井から吊るされた組紐で縛られ、大きなテーブルの上で両足を大きく広げられて其々動かせない様にテーブルの脚に固定されていた。

そんなあられもない私の開脚姿は真正面の鏡に煌々と映し出されていた。

「寿々子、いい眺めだね」
「んっ、んんっ…ゃ…やだぁ…もぅ、止めてぇ」
「…」

静かな室内に響くのは無機質なバイブ音。

先程から私の中で暴れている玩具の音だ。

今日のコスプレは遊女風に、という事で着物が用意されていた。

だけどちゃんとした着物を着たままでセックスするには思ったよりもたついてしまって、結局襦袢姿にさせられた。

そしてあっという間に四肢を拘束され、私の中には極太の玩具が埋め込まれた。

「はぁん、や…っ…も、もう…厭ぁ…!」
「…」
「きし…おかさぁん…んんっ…おかしくなっちゃうっ」
「…」

急に無言になった岸岡さんに不安が増す。

私の中で厭らしくうねる玩具に悶えている私の姿をジッと無表情で見ている。

(今日の岸岡さん…おかしい)

何となくそう思った私は、数時間前にチラッと思った疑問が確信に変わったのを悟った。

「岸岡さん…これって…お、お仕置き、なんですか…?」
「──お仕置き?なんで」
「だって…だって…急にこんな…ぁっ!こんな事…今まで…」
「…」
「私…本当にか、課長とは…なんでもありませんっ」
「…なんで此処に課長が出て来るの」
「だ、だって…っ──あぁぁっ!」

『課長』という単語を出した瞬間、私に捻じ込まれている玩具の威力が強くなった。

「今、此処で関係のない名前を出さない様に──気分が削がれるよ」
「っふぅ…ぅうっ…んぁ、あ、あぁぁぁっ!」

ブブブブブブッと激しいモーター音が響く中、私はまともに言葉が発せなくなった。

(怒ってる…岸岡さん、怒っている!)

無表情ながら笑みを湛えている岸岡さんの顔が怖かった。

課長とは何でもないと云っている私の言葉が届いていない様に思えた事が今まで持ち合わせていた甘い感情にちいさな穴を開けていった様な気がした。

其のちいさな穴から緩やかに抜けて行く好きという気持ちの代わりに私の中を埋めるのは虚無感だった。

(岸岡さんって…こんなに嫉妬深いんだ)

其れは愛されているが故に起こる感情なのだろうと思うけれど…

(私の言葉を…信じてくれないの?)

そう思うととても哀しくなったのだった。


0a7.jpg

★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチいただけると色んな意味で励みになります♪

00:00  |  ◆不完全ラヴァーズ  |  EDIT  |  Top↑

2017.07.27 (Thu)

不完全ラヴァーズ 21話



岸岡さんが迎えに来てくれるまで時間があったので、会社近くのコンビニに寄ってお泊まりグッズを購入した。

(コンビニって本当便利だなぁ)

必要最低限のものが置いてあるのはありがたいけれど、自分がいいと思う様なデザインのものが置いていないのは少しだけ残念だと思った。

そろそろ時間かなと思い会社に向かって歩いていると

「あれ、香村さん」
「あ、課長」

会社に向かう私とは反対に駅方面に向かう課長とバッタリ逢った。

「どうしたの、忘れ物?」
「あ…いえ、そうではなくて──あっ」

どう答えるべきか少し悩んでいると丁度私の視界の先に見慣れた車が停まったのが見えた。

(わぁ、時間ピッタリ)

私が道路脇に停まっている車を凝視していると

「もしかして彼氏?」
「あ、あの……はぃ」

恥ずかしいなと思いながらも素直に答えると課長はにっこりと微笑んだ。

「いいねぇ、思う存分彼氏に甘えて来なさい」
「!」

おじさんが云いがちな野暮ったい台詞なのに、何故か課長が云うと清々しく聞こえるのは何故だろうと思った。

(…っていうか…課長って)

にこやかに手を振って去って行く課長の姿を見送りながら私は(もしかして課長は私の事を──)と思ってしまった事を恥ずかしく思った。

(だって…私にだけみんなとは違うお土産くれたりラーメン奢ってくれたりしたから…つい)

好意を持たれている──なんて自惚れた考えを持ってしまったのだ。

(あぁ、恥ずかしい!すみません課長、勘違いしていました~~)

私は改めて心の中で課長に対して手を合わせて謝ったのだった。



「すみません、わざわざ迎えに来てもらって」

車の助手席に乗り込みながら私は運転席の岸岡さんに声を掛けた。

「なんで謝るの。誘ったの俺だし、今日は午後から休みだったから全然平気だよ」
「そうなんですね」

シートベルトを締めながら相槌を打っていると不意に顏に手が掛かりグイッと岸岡さんの方に向けられた。

チュッ

「!」

あっという間に軽いキスをされて驚いた。

「き、岸岡さんっ」
「ねぇ、先刻喋っていた男、誰?」
「え」
「其処で喋って別れた男」
「あ…あれは課長です。勤めている部署の上司で…」
「上司とあんなに親しげに喋るの?」
「…親しげ、でした?」
「傍から見たらね」
「…」

(もしかしてやきもち…妬いているの?)

岸岡さんは柔和な表情をしているけれど、其処には少しよくない感情が練り込まれているのかなと思ってしまった。

0a7.jpg

★ランキングサイトに参加しています。
其々1ポチいただけると色んな意味で励みになります♪

00:00  |  ◆不完全ラヴァーズ  |  EDIT  |  Top↑
 | HOME |  NEXT >>