若様の料理番 10話(終)

あの面接の日から私の周辺は大きく変わってしまった。「あぁ、本当に良かったぁ。泉さんが若の料理番になってくれて」「い、いえ…そんな、私はまだまだで…」「謙遜しないで?あの若が私以外の料理を食べている処を見られて私、感動で涙が…」「えっ!泣いているんですか?!来未さんっ」「だって…だってぇぇぇぇ~」「泣かないでください!お腹の赤ちゃんに障りますよ」矢羽々樹生の専属料理番を来未さんからバトンタッチされてから...

若様の料理番 9話

嫌いな相手だったら思いっきり抵抗出来たし、急所に一撃を喰らわせる事だって出来た。「あっ、んっ…!」だけど私はこの男相手に其れが出来なかった。「…えっ…まさか」「…」濃厚なキスから流れる様に其の行為は始まった。手慣れた様に私の衣服を剥ぎ取り、其の柔らかな唇と形のいい指が私のありとあらゆる処を弄った。甘い…媚薬の様な感触だった。其れは初めて味わった──「君、は、初めて、なの?!」「……な、何よ…悪い?」『挿入れ...

若様の料理番 8話

「…まさか…其れ、ずっと自分のせいだって思っていたの?」「え」矢羽々がとても云い辛そうに告白した話を訊き終えて、私は少し呆気に取られてしまった。私の転校を矢羽々はずっと自分が世話係に愚痴った事が原因だと思っていたというのだ。「そんな事で…そんな事、ある訳ないじゃない!あれは、あの時は父の転勤で転校したのよ」「── えっ」「知らなかった?私の父は警察官で…昔から転勤が多くて、あの小学校だって私が3年生の時に...

若様の料理番 7話

ピンポーン「…」遠くで聞こえたチャイムの音で目を開けた。(あぁ…私、寝ちゃっていたのか)畳に頭を叩き続けていた途中でふと意識がなくなっていた。其処に聞こえたチャイム音で目が覚めた。「…はい」少し痛む頭を抱えながら玄関ドアを開けると「えぇ、なんで来訪者を確かめないで開けちゃう訳?!」「…」其処にいたのは今、最高に逢いたくなかった人物。「不用心だよ、女の子のひとり暮らしなんだからさ」「なっ、な、ななな、な...

若様の料理番 6話

「ねぇ、彼女は?」「え」僕は上体を起こして来未さんに問い掛けた。「僕をグーで殴った彼女──田中泉さん」「…其れが、若を殴ってから何度も謝って其のまま屋敷から出て行ってしまったんです」「…」「あの…若、彼女と知り合いだったんですか?よく解らない会話でしたけど、小さい時の同級生、みたいな感じだったような…」「僕、小学5年の時、あの子に苛められていたんだ」「え」「でも僕、あの子の事ずっと男の子だったっていう記...

若様の料理番 5話

来未さんが出産のために入院する間、僕の料理番として勧められた其の人物を見てドキッとした。「若、こちらがご紹介したい田中 泉(たなか いずみ)さんです」「…」来未さんに促されて僕の前に一歩前に出た小柄な女性は何となく来未さんと雰囲気が似ていた。「泉さん、こちらが矢羽々家の若さまです」「…あ、あの」「…」「わ、わた、私……あのっ」泉さんと呼ばれた女性は何故か俯き加減で言葉を濁していた。(緊張、しているのかな...

若様の料理番 4話

『おい、デブ。今日もまた校長室に行くのか』『あ…』『いつもいつも校長室でどんな美味いもの喰ってんだよ』『…』『…おまえなぁ、学校にいる時ぐらいはみんなと一緒に給食喰えよ。其れが義務教育ってやつだぞ』『…』『おい!なんで何も云わないんだよ!馬鹿にしてるのか?!所詮矢羽々の御曹司さまはおまえら庶民とは違うんだよって心の中で馬鹿にしてるのか!』『ち、違…』『おまえみたいなデブは歩くよりも転がって行けよ、ほら...

若様の料理番 3話

其の話は突然舞い込んだ。「えっ、帝王切開?」「はい…」ある日の朝、朝食の席に珍しく時人と来未さんが並んで座っていた。「昨日、検診に行って検査をしたんですけれど、帝王切開での出産がいいんじゃないかと云われまして」「其れって…赤ちゃんに何か異常でも?」「あ、違うんです。どうも赤ちゃんの頭の形と私の骨盤の大きさが合っていないみたいで、其処を赤ちゃんがくぐって来れないみたいなんです」「児頭骨盤不均衡というら...

若様の料理番 2話

「はぁ…」ついてはいけないと思っていてもついてしまうため息。「あら、どうなさったんですか?若」「え…あっ」食卓のテーブルに頬杖をついていた僕に声を掛けた来未さんについドキッとしてしまう。「若がため息なんて珍しいですね」「そう?…そう…かも」来未さんは僕の前に夕食を配膳して行く。「若、今日は私が配膳しますね」「時人は?どうしたの」「花鈴をお風呂に入れています。なんだか今日は花鈴ととことん話す事があるから...

若様の料理番 1話

女の子だったら絶対にお嫁さんにしようと決めていた。だって本当に好きな人をお嫁さんに出来なかったのだから、其の人の娘をお嫁さんにするしかないじゃないかと──そう真面目に考えていた。そして実際に彼女が妊娠をして生まれた子どもが女の子だった奇跡に大喜びした。これはもう絶対に其の子をお嫁さんにしなさいという神様の思し召しなのだと思った。17の歳の差なんて成長を重ねると共に何でもない事になるのだから其の辺は大丈...

偏食の王子様 (番外編)

今日という日はある意味僕にとっては忌日だ──「あら、若様いらっしゃい」「…こんにちは」今日は、ずっと憧れていていつか手に入れたいと思っていた人が完全に他の男のものになってしまった日。「っん」「…若様、何かありました?」「…」「今日は乗り気じゃないでしょう?此処が能弁に物語っていますよ」「…」いずれ巨大企業のトップに立つという立場の僕にはありとあらゆるスキルが求められた。勿論其の中には【女性】に関する事も...

偏食の王子様 28話(終)

「来未、結婚するぞ」「…」仕事が終わり、約束通り御門さんが私の部屋に来た。そして来て早々、いきなりそう告げられてしまい私は呆気に取られた。「返事は?勿論『はい』だよな」「…え、えぇっと」(なんだかすごく御門さんらしいといえばそうなのかも知れないけれど…)一生一度のプロポーズってこういうものなのだろうか、とつい首を傾げたくなる。勿論御門さんのいう様に『はい』以外の言葉はなかったけれど、あまりにも性急で...