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偏食の王子様 9話

豪華絢爛な煌びやかな部屋の中央にドンと置かれている長いテーブル。其の上座にひとり、ポツンと座っている少年がいた。「あっ」其の少年と目が合った瞬間、少年は高い声を発して私の元に駆け寄って来た。「あ、あの…あの、僕…僕の事、覚えていますか?」「はい。この度は私を雇ってくださってありがとうございます」「…怒って…いない?」「え」「ぼ、僕の我儘で…お姉さんを無理矢理こんな処に来させちゃって…其の…怒っているかな...

偏食の王子様 8話

矢羽々家に引っ越して来た翌日──トントン「…」トントントントン「……ん」薄暗い部屋に響き渡るノック音で目が覚めた。トントントントントントン「! は、はいっ」私は慌てて飛び起き、部屋のドアを開けた。「おはようございます」「お、おお、おはよう、ございます」其処にはキッチリとスーツを着こなしている御門さんが無表情で立っていた。「案の定まだ寝ていましたね。就業時間10分前ですよ──遅刻厳禁」「あ、は、はい!直ぐに...

偏食の王子様 7話

「だからおまえを雇うんだ」「…」この状況に及ぶまでの事の次第を話し終えた御門さんは最後にそう云い締め括った。「──以上、あなたを此方で雇用する事情を全て話しました」「!」(口調が元の紳士風情に戻っている!)どうやらこの御門さんという人は、仕事の時とプライベートの時とでは口調が変わるみたいだ。(おかしな人)あまりにも其の変わりようが激しいので、私はちょっと御門さんの事が怖いなと思ったのだった。「あなた...

偏食の王子様 6話

突然降って湧いた話に私は戸惑いを隠せなかった。「状況は解っていただけましたか?」美形の其の人は特に表情を変えずに、淡々とした口調で問うた。「あの…ひとつ質問があるのですが」「なんでしょう」「何故私、なんでしょう?私の作る料理は…あの、はっきりいって此方にいらっしゃるだろう一流の料理人とは比べ物にならない程…大した事のない料理です」「…」「若と呼ばれる位のお坊ちゃんならきっと舌の肥えたグルメなお子さんで...

偏食の王子様 5話

テーブルに置かれた書類にはギッシリと細かく雇用条件が書かれていた。其の細かすぎる雇用条件などの文言は今、この場でハッキリと読み解く事は出来なかったけれど、大まかな事は頭に入った。つまり──此処は私が勤めているチェーン店のお弁当屋の大元である大手食品メーカーの創始者一族が住まう、矢羽々(やはば)家だという事。私はこの屋敷の厨房で、矢羽々 樹生(やはば たつき)なる人物専用の食事を作る料理人として雇われた...

偏食の王子様 4話

「──え…こ、此処?」別店舗の異動を命じられた私は、数日後指定された場所に来ていた。来て──いたのだけれど…「此処は…何店?」私の目の前に広がっているのは大きなお屋敷だった。どう見てもチェーン店のお弁当屋さんという店舗じゃない。どちらかといえば教科書で見た事のある鹿鳴館みたいな西洋のお屋敷だった。「あれ…?もしかして住所、間違えちゃったかなぁ」戸惑いつつ、大きな門の前でウロウロしていると、いきなりギィィィ...

偏食の王子様 3話

彼と別れたあの日以来、私は仕事場と家を行き来するだけの空虚な毎日を送っていた。「来未ちゃん、海苔弁なのに肝心の海苔を乗せ忘れちゃうなんてダメでしょうが!」「あ、ご、ごめんなさい!」注意力も集中力も散漫になっていて、同じパート従業員のおばちゃんによく怒られるようになった。「来未ちゃん、まーだ振られた彼氏の事気にしてんの?」「う…!そうズバッと傷を抉らないでください、佐藤さん」「あんたまだ若いし其れな...

偏食の王子様 2話

彼の事以外何も考えられずしばらく公園のベンチでボーッと座り込んでいた私は、すっかり陽が暮れている事にようやく気が付いた。「あ…か、帰らなくっちゃ…」私はのっそり立ち上がりヨタヨタと歩き出した。行きは彼の車で来たこの緑地公園だったけれど、其の彼はもういないのだ。本当なら今夜は彼の家にお泊りの予定だった。少し大きめのバッグにお泊りグッズも入っている。だけど今の私には其れはただの重たい荷物にしかなっていな...

偏食の王子様 1話

其れはある日突然私の身に降りかかった。「もういい!」「えっ」「もううんざりだ、ついて行けねぇよ」「…其れって」「おまえとは別れるって事!──じゃあな」「! ちょ…ま、待って──」私の呼び止める声も聞かずに彼は足早に去って行った。「…」(…なんで…こんな事になったの?)私は…彼に良かれと思って…ずっと…ずっと…「…嘘…でしょう?」行楽客で賑わう公園のベンチにて、私は力無く其の場に座り込んだのだった──私は井上 来未(...

早世の花嫁 30話(終)

──秀司さんと本当の意味で夫婦となってから半年 「あははっ、なにようヤる事ヤッてんじゃない~」「お、叔母さんっ!」「……」其の日私と秀司さんは叔母の家に来ていた。其れはある報告をするためで…「で?予定日はいつなの」「あ…えっと来年の7月中旬だって」「へぇ~夏生まれになるのか、いいねぇ」そう。私は秀司さんとの子を妊娠した。私の気持ちを秀司さんに伝えたあの日から時間があれば秀司さんは私を求め愛した。秀司...

早世の花嫁 29話

深く愛された私は微睡む中、温かな感触に包まれている事に気が付き目を覚ました── (…あっ)「……」其の温もりの正体は秀司さんだった。あどけない顔で眠っている秀司さんの寝顔。其れは初めて目にした無防備な夫の姿だった。(ふふっ…秀司さん、可愛い)うんと年上の男の人なのに寝顔は幼く、まるで少年の様だった。昨夜の激しい行為のまま全裸で抱き合っている私たち。素肌の熱を其のままダイレクトに感じ少し熱いくらいだっ...

早世の花嫁 28話

深く繋がるまでどれだけ気持ちを昂らせただろうか──?  「はぁ…はぁはぁ…」「ん…大丈夫?さっちゃん」「はぃ…大丈夫…です」最初こそ痛みがあったけれど、其の痛みはやがてもどかしい疼きに変わった。「さっちゃん…動くよ」「…はい」秀司さんは私の額や頬や唇にキスの雨を降らせ、そして緩やかに腰を動かし始めた。「あ…あっ…」「ん、んっ…はぁ…さっちゃん、さっちゃん」「はぁん…あんあんっ」秀司さんのモノが私の中で暴...
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