早世の花嫁 8話

秀司さんが作ってくれたお弁当をマジマジと見つめていると「どうしたの?さっちゃん」「あ…いえ」「あっ、もしかして厭だった?真っ黒過ぎて」「違います。あの…私が作るお弁当と違い過ぎていて、もしかして秀司さんはこういう感じのガッツリ系のお弁当の方がいいのかなって」「あぁ、そんな事ないよ。単に面倒臭がりなだけだよ」「?」「自分で作る時は適当っていうか…とりあえず米が食べられればいいって感じだから、一面にご飯...

早世の花嫁 7話

お医者さんの朝は早い。「あれ、さっちゃん?」「…秀司さん、何しているんですか」朝5時。いつも通りの時間に起床して朝食と秀司さんのお弁当を作ろうとキッチンに行くと、其処にはエプロン姿の秀司さんが菜箸を握っていた。「えーっと…見ての通りご飯を作っているんだけど」「どうして?いつも私が作っているのに」「今日は少し早目に出なくちゃいけなくてね」「じゃあそう云ってください。其れに合わせて私、起きますから」「で...

早世の花嫁 6話

「僕は知っていた。さっちゃんが僕の事、好きでもなんでもないって事を」「…」「僕への気持ちがなくても何かのメリットのために結婚するんだって気が付いていたのに…」「…」「其れでもいいと…思ってしまったんだ」「秀司さん…」突然の告白に驚き、そして其の言葉に私の気持ちはフッと軽くなったのが解った。「本当だったらさっちゃんみたいに若くて可愛い女の子をお嫁にもらう事なんて出来ない僕だったのに…さっちゃんに好きという...

早世の花嫁 5話

18歳の私は33歳の男性と結婚して夫婦になった。「さっちゃんは其れでいいの?」「え」「本当に僕と…僕を夫として選んでよかったの?」「……」成熟した大人の彼には何もかも見透かされているような気がした。──私が本当の愛を知らないままに彼を選んで結婚した事を「僕は…さっちゃんの事が好きだから」「…」「ちゃんと好きだから、だから結婚した。でもさっちゃんは…僕に対して僕と同じ気持ちではない、よね」「…はい」「……」彼は真...

早世の花嫁 4話

「はぁ~今日は疲れたよね。お風呂に入ってサッサと寝ようか」「はい」「じゃあさっちゃん、先に入っておいで」「…」「? どうしたの、僕の顔に何かついてる?」「一緒に入らないのですか?」「?!」「夫婦ってお風呂に一緒に入るものじゃ」「な、なななない!ないないないから!な、何、其の偏った夫婦論」「違うんですか。じゃあ一緒に寝るのは」「寝ない!さ、さっちゃんにはちゃんとさっちゃんの部屋があるから」「…」「…あ...

早世の花嫁 3話

「あの…よろしくお願いします」「あ…!は、はいっ、此方こそ」「…あの」「は、はい!」「…」(寺岡さん、先刻から声上擦っている)あのお見合いの日から半年後──高校を卒業した私と寺岡さんは身内だけの結婚式を挙げた。其の挙式の席で私は随分驚かされる事になった。私の方の出席者は叔母だけだったけれど、寺岡さん側の身内の数が想像以上で始終呆気に取られる事になった。寺岡さんはお祖父さんお祖母さん、ご両親に上から兄2人...

早世の花嫁 2話

 「どういう事ですか、下平さん!」お見合いの席に現れた男性は背が高くて眼鏡をかけたスマートな素敵な男性だった。でも私を見るなり真っ赤になって、同席していた叔母にいきなり詰め寄った。「どういう事も何も寺岡くん、嫁さん欲しいって云っていたじゃない。だから紹介してあげるの」「だからって…あの、どう見ても…ものすごーく若い娘さんじゃ…」「若いわよ、だって18歳だもん」「! じゅ、じゅじゅじゅ18?!」「なー...

早世の花嫁 1話

 ──私は18歳で15歳年上の男性の妻になりましたこの状況に至るまでの話を順に語って行きましょうか──私は下平 幸穂(しもひら さちほ)高校卒業間近の18歳。私の家系はいわゆる【早死にする家系】だった。父方の家系がそうで、私の父も私が生まれてから三年後に病気で亡くなった。父亡き後、母が女手一つで私を育てて来たけれど、其の母も一年前に過労が原因で亡くなってしまった。私はたったひとり残された親戚である父の妹、...

終の標(後書)

<終の標>無事に完結する事が出来ました本編32話+番外編2話とちょっと変わった形式でしたが、本当は書き上げた当初は番外編も本編に含まれていて、番外編無しの本編全34話という形でした。でもいざブログに掲載する時期になって読み返した時、何となく32話の最後が<終の標>としての最後っぽいなぁと思ってしまって、33話34話として書いた話が妙に浮いた感じに思えて仕方がなくなりました目線も莉世から里緒になっていますし、3...

終の標(番外編2)

生まれて初めて命がこの世に出て来る光景を見つめてから早くも五年が経っていた──(あぁ…空が橙)ぼんやりと放課後の教室の窓から外を眺める。そして徐に先ほど届いた携帯のメールを見つめる。【里緒、ごめんね!急に彼氏とデートする事になって…今日のスイーツ食べ放題キャンセルさせて~】(なによ…友だちよりも彼氏なんか優先させちゃって!)私が今日という日をどれだけ愉しみにしていたのか奈々は知らないのだ!そもそも先に...

終の標(番外編1)

其の日は朝から真っ青な空が広がる晴天。小学校卒業間近のほんの少し暖かさを感じるいい日だった。「芳崎、今すぐ帰りなさい」「え」6時間目が終わって帰りの支度をするかしないかのタイミングで教室に入って来た先生に云われて驚いた。「校門前に親戚の方が迎えに来ているから、急ぎなさい」「親戚…?」其処まで訊いてハッとした。「か、帰ります!今すぐ帰りますっ」私は慌ててランドセルを手に持って教室を飛び出した。駆け足で...

終の標 32話(終)

「パパ、りせちゃん、おばあちゃん、早く早くー」「こら、走るな、里緒!」「元気だなぁ…小学生は」「あの若さ…羨ましいわねぇ」小春日和と呼ぶには少し遅いかなと思う12月下旬の暖かなある日。数日前の天気の悪さが嘘みたいに晴れ渡った空の青さが眩しいこの日は姉の9回目の命日。そして里緒の9回目の誕生日でもあった。少し小高い場所にある霊園。姉の眠るお墓に行くまでには緩やかな坂道が続く。「しかし…はぁ、年々この坂道登...