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終の標 15話

『…ごめんね』え『ごめんね…莉世から…   ……を奪って…』何?『わたしのせいで…本当に……』何を奪ったって…?「お姉ちゃんっ!」勢いよく飛び起きた私は目に飛び込んで来た暗闇の中で茫然とした。(…え、夢?)洗面所で長い時間を過ごし、其のまま誰とも顔を合わせたくなくて自室に籠った。例によって母や里緒から部屋のドア越しに心配されたけれど、何でもない、眠いから寝るの一点張りでやり過ごし、気がつけば云った通りに眠り...

終の標 14話

「おかえりなさーい、りせちゃん、パパッ」「…」「ただいま、里緒」いつもの光景。一旦自宅に帰れば其れはごく当たり前の風景だった。「あれ?りせちゃん、どうしたの」「…え」「目がうさぎさんみたいだよ?」「! な、なんでもないよ。ちょっと目にゴミが入って痛くて泣いて…其れで」「えぇ、だいじょうぶ?りおが見てあげようか?」「大丈夫…ごめん、ちょっと洗面所、行ってくるね」私はすがる里緒の体をやんわりと押しのけ、洗...

終の標 13話

ヒュ~~と冷たい風が私と冬二郎さんの間を抜けて行く。「はぁ…寒いな。陽が暮れるとあっという間に凍える寒さになるね」「…うん」「…」「…」懐かしい昔話をひとしきりすると無言になる時間が増えて行った。自宅最寄り駅近くのコンビニ前で出逢って、自宅まで徒歩10分の道のりは私にとって至福の時でもあり、また心が抉られるほどに苦しい時間でもあった。(どうしよう…告白)先刻から頭の中をめぐるのは其の事ばかりだった。母と...

終の標 12話

敦との別れ話は結局物別れに終わってしまった。(はぁ…なんだか厄介だなぁ)一旦は明るく浮上した気持ちだったけれど、其れはあっという間にドンッと押し戻された様な気になってしまっていた。薄暗くなった街中を家路に向かってトボトボ歩いていると「あれ、莉世ちゃん?」「あっ」家の近くのコンビニから丁度出て来た冬二郎さんに出くわした。「やぁ、最近よくバッタリ逢うね」「そ…そう、だね」冬二郎さんにニッコリと笑いかけら...

終の標 11話

「別れるってどういう事だよ」「其のままの意味。もう敦とは付き合えない」「なんで!」「…好きな人に告白するって決めたから」「!」私が放った言葉を受け、敦は一瞬絶句した。「私、ずっと好きな人がいたの」「そ、そんなの、初耳だぞ」「だって云う訳ないじゃない。私の一番大切な想いよ」「! 誰だよ、其の好きな奴って」「敦に云う必要ある?」「ある!今はまだオレが彼氏なんだからよっ」「…」敦の云った『今はまだ』という...

終の標 10話

約束の時間はあっという間に来た。「いらっしゃいませ」カフェの扉にくっついている鈴がカランと鳴ったと同時に聞こえたスタッフの声に顔を上げると、其処には息を切らせながら店内に入って来た敦がいた。「悪ぃ、遅くなった」「そんなに待っていないから大丈夫」ハァハァと切れる息を整えている敦を見ていると、とても急いで来たんだなという事が解る。「今河の奴、全然講義を終わらせる気がなくてよーこっちは急いでるんだってガ...

終の標 9話

『莉世は初恋に真正面からぶつかっていないんじゃないの?』(真正面から…ぶつかる?)周子の言葉は衝撃的だった。「あのね、あたしずっと思っていたんだよ。莉世が男をとっかえひっかえする度に」「…」「莉世の中ではいいも悪いも初恋がちゃんと結末を迎えていないんだよ。だからすごく宙ぶらりんになっている」「…」「そりゃ、小学生の時やお姉さんが生きている時には告白なんて出来なかっただろうけど…でも今は違うでしょう?」...

終の標 8話

「おい、莉世!」「!」少し重い足取りで大学に行くと、直ぐに敦に声を掛けられた。「おまえ、なんで電話に出ないんだよ!」「…ごめん、寝てた」「はぁ?んだよ、其れ」「家に帰ってからドッと疲れて朝までノンストップで寝ちゃったのよ」「またそんなウソついておまえは──」「嘘だと思うなら私の家族に訊いてみなさいよ、電話、掛けようか?」「…」ある意味真実の事を云っているのだから私にはなんの後ろ暗い処はない。そんな淡々...

終の標 7話

「いってきまーす」「行って来ます」「はい、いってらっしゃい」「…」小学校に行く里緒と役所勤めで出勤する冬二郎さんを母は玄関先で見送っていた。そんないつものやり取りをキッチンでもそもそと朝食を摂りながら私は聞いていた。産まれて直ぐに母親を亡くした姪の里緒は、同居する私の母が主に面倒を見て来た。勿論冬二郎さんも残された我が子を育てようと必死になっていたけれど、最初の半年間は突然愛妻を亡くした哀しみと不...

終の標 6話

───あの日の事は今でもはっきりと覚えている『芳崎さん、今すぐ帰る支度をしなさい』『え』小学6年生の時、4時間目が終わって給食の時間を迎えた其の時、いつも職員室にいる女の先生が教室に来て云った。『校門前に親戚の方が迎えに来ているから、急ぎなさい』『親戚…?』よく解らないまま帰り支度をして校門前に行くと、其処には冬二郎さんの弟の夏三(なつみ)さんがいた。『莉世、早く車に乗れ!』『え、夏三くん、どうしたの?...

終の標 5話

「おはよう、りせちゃん」「おはよう、里緒」部屋から出ると里緒がちょこんと立っていた。「もう元気?」「え」「昨日、りせちゃんちょっと元気がなかったんだよね?だからお風呂にも入らないで寝ちゃったんだよね?寝たからもう元気?」「…」「まだ元気じゃない?」「…ううん、元気だよ」「本当?よかったぁー」パッと明るい笑顔になって里緒は私にバフンと抱き付いた。「里緒、心配させてごめんね」「ううん、ううん!」グリグリ...

終の標 4話

コンコン「…ん」『莉世、起きてる?』「…」『朝ご飯、食べなさい』「…」部屋の外から聞こえた母の声とカーテンの隙間から零れる光で朝なんだと思った。「……はぁ」のっそり起き上がった私はしばらく呆然とする。(あのまま寝ちゃったのか)ラブホ帰りを冬二郎さんに気づかれてからなんとなく気まずくて其のまま晩ご飯も食べずに寝てしまった。「…あ」チカチカ光っている携帯が目の端に入って来て手に取る。「…」其処にはいつも通り...
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