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2017.02.21 (Tue)

早世の花嫁 1話



 ──私は18歳で15歳年上の男性の妻になりました


この状況に至るまでの話を順に語って行きましょうか──





私は下平 幸穂(しもひら さちほ)

高校卒業間近の18歳。

私の家系はいわゆる【早死にする家系】だった。

父方の家系がそうで、私の父も私が生まれてから三年後に病気で亡くなった。

父亡き後、母が女手一つで私を育てて来たけれど、其の母も一年前に過労が原因で亡くなってしまった。

私はたったひとり残された親戚である父の妹、つまり私にとっては叔母である女性に引き取られた。


『幸穂、高校卒業したらお嫁に行きなさい』
『…叔母さん、何?突然』
『早死に家系の下平家に生まれた以上、幸穂も早世する可能性が高いわ。其れは私もそう。私がいつまでも幸穂の面倒をみてあげられる保証はないの』
『……』
『だったら若くてピチピチの内に健康そうな相手に嫁いで面倒をみてもらった方がいいに決まっているでしょう?』
『…其れは極論じゃ』
『黙りなさい!人生の先輩であるわたしが云っているのよ?!なまじ勉学一筋でロクな恋愛経験もせずにどうせ早死にするんだからと結婚も出産も諦めて来たわたし。だけど其れってすごく惨めだなと思ったの!』
『叔母さん、まだ36でしょう?まだこれからだって───』
『だから余計に後悔しているの!此処まで生きられたなら早い内に結婚して子どものひとりやふたり産んでいれば子どもたちの成人した姿を見られた筈なのに!…其れなのに』

ううっ…と泣き出した叔母さんに何と声を掛けたらいいのか解らない。

『叔母さん…』
『だからね、幸穂にはわたしみたいな惨めな想いはさせたくない訳よ!結婚するなら早い方がいい!出産も早い方がいい!だから幸穂、お嫁に行きなさーい!!』
『……』

叔母は昔から才女として誉れ高く、真面目で曲がった事が大嫌いな美しい人だった。

そんな叔母のこの荒唐無稽な決断はそう容易く取り下げられるものではなかった。

『あ、相手はちゃーんとわたしが見つけてあげるから。心配しないで?いい男に目星をつけているの』
『いい男なら叔母さんが結婚すればいいのに』
『あぁ、ダメダメ!わたしの好みじゃないもん。だけど幸穂なら絶対気に入ると思うから』
『……』

どうやら私の結婚相手は既に決定済みで、私の意見とか要望は全く訊き入れられないようだった。



そうして私は叔母の紹介で叔母の大学時代の後輩だという男性とお見合いする事になったのだった。


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2017.02.22 (Wed)

早世の花嫁 2話



 「どういう事ですか、下平さん!」

お見合いの席に現れた男性は背が高くて眼鏡をかけたスマートな素敵な男性だった。

でも私を見るなり真っ赤になって、同席していた叔母にいきなり詰め寄った。

「どういう事も何も寺岡くん、嫁さん欲しいって云っていたじゃない。だから紹介してあげるの」
「だからって…あの、どう見ても…ものすごーく若い娘さんじゃ…」
「若いわよ、だって18歳だもん」
「! じゅ、じゅじゅじゅ18?!」
「なーに驚いているのよ、寺岡くん好きでしょう?若い子。だってロリコ──」
「違います!違います違います!僕は決してそんな犯罪者みたいな趣向では」
「はいはい、解った解った」
「…絶対解っていないでしょう」
「其れよりもこの子は器量よしで働き者!わたしの折り紙付きよ。なんてったってわたしの姪だからね」
「えっ、下平さんの──」
「そうよ──だからさ余計に寺岡くんにあげたいんだよね、この子」
「……」
「という訳で、これで溜まっていた諸々のツケ、帳消しにして?いいよね ♪」
「! はぁ?いいよね ♪ じゃないですよ!まさか…そんな事のために姪御さんを」
「なんでーwin-winな条件でしょう?わたしも寺岡くんも幸せになれる。勿論幸穂だって」
「間違っています!下平さんは絶対に間違っていますー!!」

「……」

ふたりのやりとりをジッと見ていた私。

散々盛り上がっていたふたりの会話から何となく私が何故この男性の元に嫁がされる事になるのかが解った様な気がした。

(つまり叔母さんはこの人に何らかの借りがあって、其の代償にロリコン嗜好にはうってつけの私を差し出した──という事…なのかな)


── そう、悪い見方をすれば私は叔母に売られたのだ


私との結婚に最後まで反論していた男性、寺岡 秀司(てらおか しゅうじ)さんの奮闘虚しく、私と寺岡さんの結婚話はトントン拍子に進んで行ってしまったのだった。


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2017.02.23 (Thu)

早世の花嫁 3話



「あの…よろしくお願いします」
「あ…!は、はいっ、此方こそ」
「…あの」
「は、はい!」
「…」

(寺岡さん、先刻から声上擦っている)


あのお見合いの日から半年後──

高校を卒業した私と寺岡さんは身内だけの結婚式を挙げた。

其の挙式の席で私は随分驚かされる事になった。

私の方の出席者は叔母だけだったけれど、寺岡さん側の身内の数が想像以上で始終呆気に取られる事になった。

寺岡さんはお祖父さんお祖母さん、ご両親に上から兄2人、姉1人、そして弟妹3人という構成の大家族出身で、しかも既に結婚している兄姉弟妹の其々の家族も合せると親戚の数は相当な人数になった。

でもそんな環境だからこそ余計に寺岡さんの結婚に関してもご家族は煩くいう事はなく、ただ『よかったよかった』『どうか息子をよろしくね』と祝福を受けたり『若い!』『兄ちゃんには勿体ない!』というからかいの言葉をもらったりした。

(家族が沢山いる人の元に嫁いでしまった)

そうはいっても勿論大家族とは別居なので一緒に住む事はなかったけれど、今まで全く縁のなかった人たちと義理とはいえ【家族】の一員になった事に少しだけ戸惑いを感じたのだった。



「あの…何、かな」
「私、なんて呼んだらいいですか?」
「え、何を」
「寺岡さんの事を何と呼べばいいですか?『ご主人様』ですか?」
「! ご、ごごごご、ご主人様?!」
「違いますか?じゃあ『あなた』『ダーリン』『旦那様』…」
「ちょ、ちょっと待って!ストップストップ!」
「…」
「はぁぁ、心臓に悪い!そんな風に呼ばれたら…ちょっと色々妄想──い、いや違う!そんな」
「秀司さん」
「!」
「──で、いいですか」
「……」
「名前でもダメ、ですか」
「…あ…ううん、其の、ように」
「解りました」
「…」

少しからかってみようかなと思ったけれど、予想以上の反応で思わず声を上げて笑ってしまいそうになった。

(…面白い、この人)

私よりも一回り以上も年上なのに全くそんな風には見えない。

私の問い掛けにいちいち顔を赤らめてオドオドして…

そんな態度から何となく

(女の人に慣れていないのかな)

なんて思ったりしたのだった。


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2017.02.24 (Fri)

早世の花嫁 4話



「はぁ~今日は疲れたよね。お風呂に入ってサッサと寝ようか」
「はい」
「じゃあさっちゃん、先に入っておいで」
「…」
「? どうしたの、僕の顔に何かついてる?」
「一緒に入らないのですか?」
「?!」
「夫婦ってお風呂に一緒に入るものじゃ」
「な、なななない!ないないないから!な、何、其の偏った夫婦論」
「違うんですか。じゃあ一緒に寝るのは」
「寝ない!さ、さっちゃんにはちゃんとさっちゃんの部屋があるから」
「…」
「…あのね、さっちゃん」
「はい」
「僕たちは一応夫婦、という形にはなったけれど、其の、僕はさっちゃんを…そ、そういう対象では見てはいけなくて…」
「そういう対象?」
「其の…夫婦だから当然あっていい行為、というか…其の、営みというか…」
「セックスの事ですか」
「!!」
「秀司さん、変な気遣いは要りません。私、ちゃんと妻としての役目は果たす覚悟で嫁ぎました」
「な…っ」
「だからいいんです。私を世間一般的な【妻】として扱っても」
「…」


そう。

私には結婚するまでに其れなりに色んな葛藤があった。

勿論叔母の云う事に逆らったり拒否したり、本気で厭だったら拒めた結婚だった。

だけど秀司さんとお見合いをして、其れなりの期間秀司さんを観察して其のひととなりを徐々に知っていった。


小児科のお医者さんである秀司さんは子ども好きで優しい性格。

ちいさな子どもを溺愛していて、時々其の過度な愛情が周りには歪んで見え【幼女好き】【ショタ好き】【ロリコン】と評価される事となり、性格も見てくれもいいのにモテない。

(医者、子ども好き)

私には其の条件だけで充分だった。

早死に家系の私がいつどんな風に体の不調を訴えるのか解らない。

其の時になって夫の職業が医師というのは心強い。

そして子ども好きというのも、万が一子どもを残して私が死ぬ事があっても残された子どもを大切にしてくれるだろうという気持ちがあった。


──例え私と秀司さんの間に本当の【愛】がなくても…


私には過ぎた結婚だと思ったから決めたのだ。


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2017.02.25 (Sat)

早世の花嫁 5話



18歳の私は33歳の男性と結婚して夫婦になった。


「さっちゃんは其れでいいの?」
「え」
「本当に僕と…僕を夫として選んでよかったの?」
「……」

成熟した大人の彼には何もかも見透かされているような気がした。


──私が本当の愛を知らないままに彼を選んで結婚した事を


「僕は…さっちゃんの事が好きだから」
「…」
「ちゃんと好きだから、だから結婚した。でもさっちゃんは…僕に対して僕と同じ気持ちではない、よね」
「…はい」
「……」

彼は真摯に私と向き合おうとしている。

其れが解ったから私も素直になろうと、ならないといけないと思った。

「本当は結婚する前にちゃんと云うべきだった事かも知れません」
「…」
「私は条件で秀司さんと結婚するのだと」
「…」
「でも私は……解らなかったから」
「え」
「人を愛するという事が。昔から恋愛に対して一歩引いてしまっている自分がいて…其れは自分が置かれている境遇とか運命とか…そういった負の事ばかりに気が行っていて、人を愛するという事が後手になってしまっている処があって」
「…」
「こんな私だから一生結婚しないものだと思っていました。でも叔母から秀司さんとの話をもらって諦めていたはずの結婚が周囲に認められるならしてもいいんだって…」
「…」
「恋愛感情がなくてもしていい結婚だったから…」
「…さっちゃん」
「私、秀司さんに失礼ですよね…こんな気持ちで結婚してしまって」
「其れは──僕も悪い」
「え」

話せば話すほど申し訳ない気持ちが沸々と湧いて来る。

神前で誓った言葉は嘘だったという罪悪感が私の心の中を暗くして行く。


そんな中に差し込んだか細い一筋の光。


其れは彼の言葉だった。


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