早世の花嫁 1話

 ──私は18歳で15歳年上の男性の妻になりましたこの状況に至るまでの話を順に語って行きましょうか──私は下平 幸穂(しもひら さちほ)高校卒業間近の18歳。私の家系はいわゆる【早死にする家系】だった。父方の家系がそうで、私の父も私が生まれてから三年後に病気で亡くなった。父亡き後、母が女手一つで私を育てて来たけれど、其の母も一年前に過労が原因で亡くなってしまった。私はたったひとり残された親戚である父の妹、...

早世の花嫁 2話

 「どういう事ですか、下平さん!」お見合いの席に現れた男性は背が高くて眼鏡をかけたスマートな素敵な男性だった。でも私を見るなり真っ赤になって、同席していた叔母にいきなり詰め寄った。「どういう事も何も寺岡くん、嫁さん欲しいって云っていたじゃない。だから紹介してあげるの」「だからって…あの、どう見ても…ものすごーく若い娘さんじゃ…」「若いわよ、だって18歳だもん」「! じゅ、じゅじゅじゅ18?!」「なー...

早世の花嫁 3話

「あの…よろしくお願いします」「あ…!は、はいっ、此方こそ」「…あの」「は、はい!」「…」(寺岡さん、先刻から声上擦っている)あのお見合いの日から半年後──高校を卒業した私と寺岡さんは身内だけの結婚式を挙げた。其の挙式の席で私は随分驚かされる事になった。私の方の出席者は叔母だけだったけれど、寺岡さん側の身内の数が想像以上で始終呆気に取られる事になった。寺岡さんはお祖父さんお祖母さん、ご両親に上から兄2人...

早世の花嫁 4話

「はぁ~今日は疲れたよね。お風呂に入ってサッサと寝ようか」「はい」「じゃあさっちゃん、先に入っておいで」「…」「? どうしたの、僕の顔に何かついてる?」「一緒に入らないのですか?」「?!」「夫婦ってお風呂に一緒に入るものじゃ」「な、なななない!ないないないから!な、何、其の偏った夫婦論」「違うんですか。じゃあ一緒に寝るのは」「寝ない!さ、さっちゃんにはちゃんとさっちゃんの部屋があるから」「…」「…あ...

早世の花嫁 5話

18歳の私は33歳の男性と結婚して夫婦になった。「さっちゃんは其れでいいの?」「え」「本当に僕と…僕を夫として選んでよかったの?」「……」成熟した大人の彼には何もかも見透かされているような気がした。──私が本当の愛を知らないままに彼を選んで結婚した事を「僕は…さっちゃんの事が好きだから」「…」「ちゃんと好きだから、だから結婚した。でもさっちゃんは…僕に対して僕と同じ気持ちではない、よね」「…はい」「……」彼は真...

早世の花嫁 6話

「僕は知っていた。さっちゃんが僕の事、好きでもなんでもないって事を」「…」「僕への気持ちがなくても何かのメリットのために結婚するんだって気が付いていたのに…」「…」「其れでもいいと…思ってしまったんだ」「秀司さん…」突然の告白に驚き、そして其の言葉に私の気持ちはフッと軽くなったのが解った。「本当だったらさっちゃんみたいに若くて可愛い女の子をお嫁にもらう事なんて出来ない僕だったのに…さっちゃんに好きという...

早世の花嫁 7話

お医者さんの朝は早い。「あれ、さっちゃん?」「…秀司さん、何しているんですか」朝5時。いつも通りの時間に起床して朝食と秀司さんのお弁当を作ろうとキッチンに行くと、其処にはエプロン姿の秀司さんが菜箸を握っていた。「えーっと…見ての通りご飯を作っているんだけど」「どうして?いつも私が作っているのに」「今日は少し早目に出なくちゃいけなくてね」「じゃあそう云ってください。其れに合わせて私、起きますから」「で...

早世の花嫁 8話

秀司さんが作ってくれたお弁当をマジマジと見つめていると「どうしたの?さっちゃん」「あ…いえ」「あっ、もしかして厭だった?真っ黒過ぎて」「違います。あの…私が作るお弁当と違い過ぎていて、もしかして秀司さんはこういう感じのガッツリ系のお弁当の方がいいのかなって」「あぁ、そんな事ないよ。単に面倒臭がりなだけだよ」「?」「自分で作る時は適当っていうか…とりあえず米が食べられればいいって感じだから、一面にご飯...

早世の花嫁 9話

「こん、こんっ」ある日、起きた時から咳込むようになった。(やだな、季節の変わり目だから)春から初夏になるというこの時期、私は毎年の様に体調を崩す事があった。元々気管支が強くなかった私だったので、体調の崩し始めはいつも咳が出る事によって知る。(薬…もらってこなくっちゃ)慣れたものでこんな症状が出たら直ぐに治療しなくてはと思う。咳込む症状が出るといつも飲む薬があった。其の薬は叔母が勤める病院でもらって...

早世の花嫁 10話

「見て、寺岡先生だよ」「本当だ、また小児病棟の子たちと遊んでいるね」私同様、少し離れた処で秀司さんと子どもたちを見ているふたりの年配の女性がいた。手にモップやバケツを持っている事から清掃の人かなと思った。「寺岡先生、診察がない時いつもああやって子どもと遊んでいるわよね」「本当子ども好きなのねぇ。いつ休んでいるのかしら?」「そういえば結婚したんだっけ」「そうそう、なんでも滅茶苦茶若い子と!」「まさか...

早世の花嫁 11話

「ただいま」「おかえりなさい」其の日、夕方には帰宅した秀司さん。私はいつも通り玄関先まで迎えに出た。「さっちゃん、今日病院に来たって?」「え…どうして」「今日さっちゃんを診た先生が教えてくれた」「親しい先生なんですか?」「というか、一応循環器内科の先生にはさっちゃんの情報を教えてあるんだ。僕の奥さんだって事でもし来院したら教えてもらえる様にと」「…そう、なんですか」「あ、もしかしてそういうのダメ、だ...

早世の花嫁 12話

夫が医師で、頼りがいのある年上で、そして何より優しい。病気がちで地味な性格の私なんかを好きだと云ってくれる奇特な人。(なんだか…どうしてそんなに私に都合のいい事ばかりなんだろう)今のこの現状があまりにも恵まれ過ぎていてどうして?という気持ちは昼間のあの言葉によって理由づけられそうになっていた。『本当の処どうなんだろうねぇ。まぁ寺岡先生と下平先生、仲良かったけど』『でもまぁ、アレは完全に寺岡先生の片...