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小犬カレシ 1話

職業柄、知りたいと思わない事でも知ってしまう事が多々あった。「あぁ、そうなんだよ。ごめんね杏子ちゃん」「…」「響太(キョウタ)の親子遠足には絶対行くから!うん、そう」「…」「じゃあね、愛してるよ~杏子ちゃん」「…おぇ」思わず漏れ出た言葉に耳聡く辰巳が反応した。「おまえは~人のラブコールを訊いているんじゃねぇよ!」「別に訊きたくて訊いたんじゃありません。社長が私を呼び出しておきながら、私が来た事に気が付か...

小犬カレシ 2話

こそっとスケジュール帳を覗く。(──予定…なし)「梓さんって意外と古風ですよねぇ」「え」横から声を掛けられスケジュール帳から目を離した。今年入社したばかりのピチピチの新人受付嬢、吉野愛がくりくりの目を輝かせて私を見ていた。「意外って言葉、余計よ」「あ、すみませぇん。でも今どき紙に書くだなんて古いなぁと思って」「…」「あ、悪い意味じゃありませんよ?梓さんってすっごく綺麗で大人の女性って感じだから流行の先...

小犬カレシ 3話

「其れPCメンテナンスの光岡くんですよぉ」「PCメンテナンス?」休憩から戻った私は、其れとなく先刻逢った男の子に関する事を吉野に訊いてみた。吉野は「あぁ」と直ぐに解った様で、色々とベラベラと喋ってくれた。「今社内のホストコンピューターのメンテナンスを行っていて、光岡くんは業務を請け負っているメンテナンス会社の社員なんです」「あぁ」其の話は辰巳から訊いて知っていた。(機械関係の事は詳しくないから訊き流し...

小犬カレシ 4話

  約束の時間は21時だった。「ん、あっああぁ」「はぁ…やっぱいいな、ん、梓の体」「…」グッグッと腰の律動に合わせるように私も腰をくねらせる。「あぁっ、ん、いい、いい──イキそう」「ふっ…ん…」『イキそう』と云ってからものの数秒であっけなくイッた彼は、早々にモノを私の中から引き出していた。彼のいつも通りの行動だった。手早くゴムを外し、サッサとひとりでシャワーを浴びに行く。これもいつもの事なのでもう...

小犬カレシ 5話

「サイバーフロスト…か」「ちょっと厄介な事に首を突っ込んでいるみたいよ」「──まぁ、想定の範囲だな」「何か嗅ぎ付けていた?」「んーなんとなーく、な」「…」辰巳にいつもの様に情報を報告するために社長室に来ていた。私からの報告を受けた辰巳は少し思案顔をしたけれど、直ぐに「まぁ大丈夫だ」といつも通りのあっけらかんとした表情になった。「其の自信の根拠は何」「あ?んーホラ、ひきくんがいるからな」「ひきくん?」「...

小犬カレシ 6話

退屈な仕事が終わり、ポキポキ肩を鳴らしながら会社を出て、数メートル歩いた処で異変に気が付いた。「…」(あれは…何?)曲がり角の塀の処からチラチラ見え隠れしているものは…「──光岡くん?」「!」夕陽に照らされて茶色い髪がキラキラしていたから直ぐに解った。「こんな処で何をしているの?」「あ…あの…」私よりも背の低い彼をジッと見つめる。幼い顔立ちに大きな黒目がちな瞳。今どきの若者らしい茶髪に私服。オドオドした...

小犬カレシ 7話

 あんな挑発的な誘いをしたらこういう展開になるって…解り過ぎるほどに解っていた──はずなのに「ちょ…ちょっと、あっ!」「んっ、んっ」先刻から体中を嘗め回されて、どうしようにもなくもどかしい気持ちでいっぱいになっていた。一緒にご飯を食べたい──と云った光岡を誘い、食欲を満たした後なだれ込むようにホテルにインした。部屋に入った途端貪るようなキスをされ、ぎこちない手付きで服を肌蹴させられ有り得ないほど濃厚...

小犬カレシ 8話

 「あれ、梓さん。なんだか肌、綺麗ですねぇ」「え」いつもの様に受付にて上辺だけの笑顔を張り付けて業務に当たっていると不意に吉野にそう云われた。「少し前から思っていたんですけど、なんだか最近益々綺麗になったんじゃないですかぁ」「そんな事ないわよ」「いやいや、絶対違いますよぉーなんですか、エステでも始めたんですか?」「…」普通綺麗になった──といったら『恋でもしているんですか』という単語が出て来るも...

小犬カレシ 9話

喧嘩別れのようになったあの日から、私は秋良を避ける日々を送っていた。私から逢おうとしなければ案外社内でも逢わないのだという事を知った。「…はぁ」「なんだよ、辛気臭いな」例によって社長室にて報告業務を終えた後、中々通常業務に戻る気になれずに管を巻いていた。「…会社、辞めたい」「おっ?なんだ寿退社か」「厭味でしょ、其れ」「なんで厭味?おまえ、ひきくんと付き合ってるんだろう?」「……は?」辰巳の口から思わぬ...

小犬カレシ 10話(終)

「駆除、終了しました」「おぉーさっすがひきくん、仕事が早いなぁ~」「…其の呼び方…いい加減よしてください」「いいじゃないか、俺、気に入ってるんだよ」「…」(やっぱり、秋良だ)辰巳と話しているのは秋良だった。「やっぱりサイバーフロストか?」「…多分。クラッキング仕掛けて来たから自動防御ブロック埋め込んでおきました」「ありがとう。やっぱりひきくんにまかせておけば安心だな」「買い被り過ぎ──俺なんて…どうしよ...
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