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茜色の日々 1話

「俺、40万の男です」「…はぁ?」見合いの席でいきなりこんな事を云った男に私は初めて逢った。私は松尾 茜(マツオ アカネ)23歳。小中高一貫して女子校だった。おまけに大学も女子短大。見てくれの悪さも手伝って、生まれてから23年間男と付き合った事なんてなかった。おまけに人見知りな性格が災いして短大卒業後もまともな職に就かず、小さいながらも会社経営をしていた親の脛をかじって生きて来た。しかしそんな私を見かねた両親は...

茜色の日々 2話

8回目の見合い相手と私は交際から一年後に結婚した。夫となった人は大手宅配便会社のセールスドライバー。月に40万稼ぐという触れ込みで初対面の私にアピールをした少し変わった人。だけど彼は私の見た目の悪さを欠点として捉えず、かえって長所だと云ってくれた初めての男の人だった。そんな彼だから私は生まれて初めて今までの自分を変えたいと思った。──そう、私は彼のために綺麗になりたいと心の底から思ったのだった「だから...

茜色の日々 3話

  私が男の人と付き合ったのは夫となった群司さんが初めてだった。──つまり最初で最後の男の人、という事そういった事から当然男女の親密な関係という行為も群司さんで初めて知った訳で…「あ、あっ…ん、っ」「はぁ…気持ちいいよ、茜」「…ん」23年間経験のなかった私は群司さんと知り合い、お付き合いを始めて三ヶ月を過ぎた頃にやっと行為の全貌を知った。其の頃には群司さんとならそういう事をしてもいいと思うようにな...

茜色の日々 4話

 痩せた私は世間的には『可愛い』と認識される女なのだと知った事はちょっとした衝撃だった。私の両親は痩せた私に対して群司さんと同様の心配をしていたから、今の私は【不健康】なのだという認識しかなかった。だから結婚式の時に参加した人たちから『素敵!』だの『綺麗だ』と浴びせられた言葉は、結婚式という特別な場所、環境から生じる社交辞令だと思っていたのだ。「…私、綺麗…なの?」「えっ、自覚、ないの?」「全然...

茜色の日々 5話

其の日私は実家にいた。「茜、これも食べなさい」「えっ」「ホラ、茜が好きだった名月堂の豆大福もあるぞ」「…」目の前に出された食べ物の多さに眩暈を感じた。「あのね、私お腹空いていないの。いつも思っていたけど私が帰る度にこんなに沢山のお菓子、出さないでくれる?」「だって茜、また痩せたんじゃない?大丈夫?」「…」「群司くんは茜に満足に食べさせない生活を強いているんじゃないのか?もう一度お父さんから──」「もう...

茜色の日々 6話

「やっぱり…まさか、とは思ったけれど」「山科、さん」私に声を掛けて来たのは、山科さんという40代後半の男性だった。彼は私の6人目の見合い相手だった。「いやぁ…すっかり見違えたなぁ」「どうして此処に」「社長に託(コトヅケ)があってご自宅に伺う途中だったんだ」「そうだったんですか」山科さんは父の会社の下請け会社の工場長だった。20年連れ添った奥さんを病気で亡くしていて、再婚相手にと私との見合いがセッティングされ...

茜色の日々 7話

深夜に帰宅した群司さんの様子が変だった。「茜、今日は何処に行っていたんだ」「あ…あの…実家に…」「何をしに」「何をって…何も…ただ単にお父さんとお母さんの顔を見に」「…」「…群司さん?」こんな群司さんを見たのは初めてだった。外出はいつもしている。友だちに会ったり買物をしたり、そんな私の話を群司さんはいつも愉しそうに訊いてくれた。(其れなのに今日に限ってどうして)「夕方、お義父さんから電話をもらった」「え...

茜色の日々 8話(終)

  群司さんに善かれと思っていた行動が全て裏目に出た。「…」「…」私が此処数日考えていた事を全て話し、其れを訊き終えた群司さんは少し複雑そうな顔をした。「あの…本当にごめんなさい、群司さん」「いや、あの、俺の方こそ…ごめん」「え」何故か深々と私に頭を下げる群司さんに唖然とする。「茜の気持ちをよく知りもしないで…いきなり乱暴な事をして…酷い抱き方をしてしまって…本当にごめんなさい!」「…群司さん」(...
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