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初恋はまだ 1話

私の家はいわゆるお金持ち──という部類に入る家だった。私の父が滝沢グループという大企業の社長という立場である事から、自然と私には『お嬢様』という肩書きが付くようになっていた。だけど別に私が偉いんじゃない。父が偉いだけの話だ。私自身、お嬢様という肩書に満足している訳じゃない。だけどそんな私の心情を解ってくれる人はほとんどいなかった──「杏香、待てよ!」「…」「なんで急に別れるだなんて…そんな事云うんだよっ...

初恋はまだ 2話

私は叔父である潤への気持ちを吹っ切るために色んな男と付き合って来た。私が社長の娘だと知っている男は大抵お金目当てで近づいて来た。稀に私がいいなと思った男に私から告白しても、私の事を大して好きでもなくても、私の先に見えるお金目的でOKしてしまう有様だった。男の本性を確かめるために様々な嘘をついて見極める癖がついてしまった。結局の処、今まで付き合って来た男たちは私自身を好きでもなんでもなかったという事が...

初恋はまだ 3話

誘拐犯だと思しき怪しい男と共に、私は男の運転する車に乗っていた。「父の具合、どうなんですか?」「えっ!あ、あの…ぼ、僕は詳しくはし、知らなくて…」「…」挙動不審の男は運転しながら、時折私からされる質問に答える度にハンドルをグラつかせていた。(この人…こんなんで家から身代金要求出来るのかしら)別にまだ誘拐犯だと確定した訳ではないけれど、私をこうやって連れ去る目的は其れしか考えられない。車に乗ってから10分...

初恋はまだ 4話

車が到着したのは何処からどう見ても病院ではなかった。世間一般にマンションと呼ばれる建物の駐車場に止められた車の中で、男は俯いたまま黙り込んでしまった。「…此処、病院じゃないですね」「…」「病院に行くんじゃなかったんですか?」「…」「…」私の言葉に男は俯いたままなんの反応も見せなかった。(…仕方がないなぁ)私はシートベルトを外して車を降りようとした。其の瞬間「ごめんなさい!」「え」いきなり男は大きな声で...

初恋はまだ 5話(終)

斎藤 光輝と名乗った間抜けな誘拐犯と私は交際を始める事になった。驚いた事に光輝はなんと父の会社の社員だった。一年程前、社員家族を招いて行われたレクリエーション大会の時にたまたま参加していた私を見掛けて一目惚れして、以来思慕を強めて行ったという。一年の間で色々私の事を嗅ぎまわって、勿論私が不特定多数の男と付き合っている場面にも出くわしていて、其れでも其の想いは強くなっていったと告白した。「…光輝って本...
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