Darling Sweeper 1話

後悔先に立たずって言葉は私のためにあるものだと今更ながらに痛感している──「お母様が亡くなったのは小学生の時、ですか?」「はい、心臓の病気で」「そうですか、其れはご苦労されましたね」「…はい」「だから家事全般が得意という事なんですね」「はい、母が亡くなってからは私が父と弟の面倒を見なくてはという気持ちが大きくて、勉学との両立をしながら自分なりに一生懸命やって来たつもりです」「いや、立派です」「……」こ...

Darling Sweeper 2話

ひょんな事から内野宮さんとふたりで飲みに行く事になってしまってドキドキしていた。実は前々からちょっと気になっていた人だったから。嬉しい気持ちと緊張した気持ち、色んな想いが私の中で渦巻いていた。「居酒屋とか大丈夫?」「はい、大丈夫ですよ」「そう、よかった。いや、なんか俺の知ってる女の子ってフレンチとかイタリアンとかそういう小洒落た店に連れて行かないと煩い子ばっかりでさー」「…はぁ」其の内野宮さんの言...

Darling Sweeper 3話

『恵麻、おまえにはお父さんの気持ちが解ってもらえないんだな』『解らないよ…だって…だって』『男っていうのは…寂しい生き物なんだよ』『そんなのいい訳にしか聞えない!』「──っ!」見たくない夢を見て目が覚めた。「…ったぁ」(頭…痛い…)昨日、飲みすぎちゃったなぁ…と頭を押さえていてふと気がつく。「…………あれ」(なんだか私の小汚いアパートの部屋とは…随分様相が違うんですけど…?)「!」(大体家、ベッドなんて置いてな...

Darling Sweeper 4話

其の日、本当に心の底から会社に行きたくないと思った。(どうして…こうなっちゃったんだろう) 昔からお酒にまつわる失態は多かったけれど、今回の様な大失態は初めてだった。内野宮さんだけが悪いんじゃない。内野宮さんは私が持ち掛けた事に乗っただけ。何度もそう思うのにどうしてだか内野宮さんに対する気持ちが悪い方に引っ張られていってしまって正直今逢ったら気まずいなという思いが大きかった。(もう絶対禁酒しよう!う...

Darling Sweeper 5話

「ちょ、ちょっと!」「…」どうしよう…(何処に連れて行かれるんだろう)私はこれからどうなるのかという不安でいっぱいになりながらも、思いっきり抵抗出来ない自分自身に戸惑っていた。ロッカールームのある細い廊下の其の先、突き当たりのドアには【関係者以外立入禁止】のプレートが張り付いていた。だけど内野宮さんは其れを無視してポケットから鍵の束を取り出し、ひとつの鍵を選び鍵穴に差込み簡単に開けてしまった。(なん...

Darling Sweeper 6話

内野宮さんとの間に深い溝みたいなのが出来てしまったと感じてから数日。たまに会社の廊下で内野宮さんと逢う事もあったけれど、お互い気まずさから目を逸らしてしまってなんだか避ける様にやり過ごして来た。(やっぱり…嫌われたかな)以前の様なやり取りが懐かしく思える。元々見かければ声を掛け合って、立ち話をして…ただ其れだけだった。そんな状態だったから私は内野宮さんの事をすごく知っていた訳じゃなかった。勝手に自分...

Darling Sweeper 7話

社長に「少し話がしたいのだけれど」と云われ、私は役員用の部屋に通された。「いやぁ…しかし懐かしいなぁー何年振りだろう…?かれこれ10年…11年くらいかな?」「そうですね、母が亡くなったのが私が11の時ですから…11年になります」「…麻美(あさみ)さんが亡くなってからレンタル契約も更新されなかったからすっかり疎遠になってしまっていたね。しかしまさか恵麻ちゃんがうちの会社に入社していたなんて…人事部から提出された名...

Darling Sweeper 8話

社長から励ましの言葉をもらってから数日──私は今まで以上に研修に力を入れる毎日を送っていた。「弱アルカリ性で研磨作用のある重曹には使用出来ないものがあります。其れはなんですか?──住吉さん」「はい、アルミには使用出来ません。黒く変色してしまうので使用には注意が必要です」「そうですね。では次に──」「最近調子いいね、住吉さん」「そうかな?ちょっとだけ勉強を頑張っているだけで…」「相変わらず実技はまだまだだ...

Darling Sweeper 9話

『研修で同じグループになった時から気になっていたんだ…思い切って話しかけて…友だちになってから恵麻の事を知れば知るほど好きになっていって…だからオレと、オレと付き合って欲しい』「…はぁ」昼間詠二から告白された。友だちだとずっと思って来たから、私は詠二の告白を直ぐに受け入れる事が出来なくて『あ、あの…いきなり云われても…其の…あの…』『うん…戸惑う気持ち、解るよ。ごめん、いきなり…でもオレ、本気だから』『…』...

Darling Sweeper 10話

内野宮さんに連れて来られた定食屋さんで食べた煮魚定食はとても美味しかった。「はぁー美味しかったぁー」「そうだろう?まぁどのメニューも大抵美味いんだけどな」定食屋さんを後にした私たちは駅に向かって歩いていた。周りはすっかり暗くなっていて、チラッと時計を覗くと20時過ぎを差していた。(結構長居していたんだなぁ)食べながら思いのほか話が盛り上がってしまったのには驚いた。内野宮さんと話していると、あっという...

Darling Sweeper 11話

内野宮さんが私の家に来る──なんとなくそういう流れになってしまって駅から電車に乗って6駅。駅から徒歩8分程の二階建てアパートの2階。部屋の前で鍵を開けようとした瞬間、いきなり気がついた。「あっ!」 「どうした」「……」(し、しまった…)今…部屋の中って確か──「問題発生?」「えっ?!」「別に気にしないけど」「……」今更内野宮さんにどう思われてもいいのかなと思った。最初から素に近い自分を晒して来たつもり…だったか...

Darling Sweeper 12話

其処に座れと云われ座った。内野宮さんが此処に来る前に寄ったコンビニで買った缶コーヒーを「どうぞ」と勧められた。(私の分まで買っていたんだ)そう思ったらなんだか妙にドキドキしてしまった。缶コーヒーをひと口飲んだ内野宮さんは其の缶をテーブルに置いて、そしていきなり私の前で土下座した。「すまなかった!!」「! なっ、何ですか…突然…!」私は飲んでいた缶コーヒーを噴出しそうになった。「──あの日…おまえと飲み...