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毒舌姫の恋愛事情 1話

どうして今頃気が付いたんだろう「わぁ~綺麗ね、美沙!」「ありがとう」「ねぇねぇ、写真撮らせてー」「あ、うん」純白のウェディングドレスに身を包んだ幼馴染みを目の前にして、私は突然気が付いてしまった「恵梨花(えりか)も、一緒に写真撮ろうよ」「…ごめん、私、トイレ」「え?ちょっとぐらい我慢出来ないの?」「出来ない!漏れちゃう」「あぁ…そう」せせら笑う友人たちと少し心配そうな顔をしている美沙を残し、私は脱兎...

毒舌姫の恋愛事情 2話

私と由隆、そして美沙の三人は物心ついた時からずっと一緒に居た。お互い幼い頃に新興住宅地に引っ越して来た縁で繋がった私たち。ひとりっ子の私は突然出来た同い年の由隆と美沙をまるで弟か妹の様に扱った。だって私は三人の中で一番誕生日が早かったし、体も私が一番大きかった。そして物怖じしない性格の私は、弱虫の由隆と気弱で優しい性格の美沙の先頭に立ち、常にふたりを引っ張って来たのだった。そんな関係は中学生になっ...

毒舌姫の恋愛事情 3話

「こんな処で何してるの?」「!」結婚式場の庭園の隅にある東屋で物思いに耽っている処に急に声を掛けられた。「もしかして泣いてるの?」「何処に目、つけてんのよ。泣いてなんかいないわよ」声を掛けて来た男には見覚えがあった。式場に着いて受付を済ませる時、其処にいた男だった。確か由隆の会社の同僚で友人だと云っていた。「あのさ、君…恵梨花ちゃん、だよね」「初対面なのに馴れ馴れしいわね。誰が名前で呼んでいいって...

毒舌姫の恋愛事情 4話

「あれ?恵梨花、二次会行かないの?」同じテーブルに着いていた友人のひとりに呼び止められた。「あぁ、うん。夜から用事があってさ」私は引き出物が入った大きな紙袋を掴んで会場を出ようとした。すると瞬く間に何人かの友人に囲まれやいのやいの云われ始めた。「何よぉ、大事な幼馴染みの二次会だよ?ちょっとでも出られないのぉ?」「美沙には云ってあるからさ。私の分もあんた達で祝って来てよ」「なんだぁー恵梨花が来ないと...

毒舌姫の恋愛事情 5話

チュンチュン「…ん」目を瞑っていても眼球にぼんやり光が当たっている事が解る。(…朝?)ぼやけている頭が動き始めて、そして薄っすらと瞼を開ける。「…」目に飛び込んで来たのは知っている様な気がする光景。(煙草くさい…)鼻につく匂いと、体に巻き付いている筋肉質の腕。嗅覚と触覚で何となく状況が呑み込めた。「…ケイスケ」「…」「ちょっと…ケイスケ、起きてる?」「…ううん、寝てる」「…」「……?! わぁぁぁぁっ!ちょ、ち...

毒舌姫の恋愛事情 6話

『なぁ、恵梨花……オレと付き合わねぇ?』ケイスケにそう告白された私はほんの少しだけ考えてしまった。他の男にされる告白は秒殺だというのに…(其れってケイスケは他の男とは違うって事──なんだよね)広く浅くいる男友だちの中でもケイスケは大学に入ってから出来た友だちで、現在でも其れなりに交流している友人歴の年数で云えば由隆に次ぐ長さとなる。最初はチャラチャラした男で、鼻持ちならない男だと思った。出逢った時から...

毒舌姫の恋愛事情 7話

【ハワイに着いたよ】【初海外!羨ましいか?】「…」LINEで送られて来る実況中継みたいな文章にうんざりしていた。挙式を終えた由隆と美沙は新婚旅行でハワイに飛んでいた。其れからしつこい位にメッセージは短い時間の内に届く。いくら既読スルーしていても次々に幸せそうな文言は届く。(忌々しいなぁ)私はハワイ土産と思われるありとあらゆる商品名を書き、たった一度だけ返信した。「はぁ~」ケイスケの自宅を出て、其のまま...

毒舌姫の恋愛事情 8話

ファッションホテルに休憩で入ってから2時間。「はぁ…やっぱり恵梨花さん、凄いや」「翔太も上手くなっていたよ?彼女に結構色々させているんじゃないの」「か、彼女は…いなくて」「そうなの?あんた可愛い顔しているからモテると思ってた」「そんな事…」「…」翔太の童貞を奪ったのは私だった。奪った──という言葉は適切ではないかも知れないけれど、中3の翔太は好奇心の塊で、思春期特有の興味から私に強請ったという背景がある。...

毒舌姫の恋愛事情 9話

憂鬱だった気分は、偶然再会した翔太によって随分解消された。お蔭で私は其の日、なんともいえない朗らかな気持ちで一日を終える事が出来たのだった。「おはようございます」翌日は月曜日。また生活のために働く日々が始まる。「おはよう、新堂さん。出勤早々悪いんだけど」「はい」リテールサポート会社に就職してからもうじき一年が経とうとしていた。最初は覚える事も多く、慣れない業界用語やノウハウなど専門的な知識がない事...

毒舌姫の恋愛事情 10話

(私って今年、恋愛運悪かったっけ?)何となくそんな事を考えながらむしゃくしゃした気持ちを持て余していた。『ねぇ、お洒落なお店予約してあるから食事に行かない?』帰り間際、例によって池内に誘われたけれど、勿論丁重にお断りした。『池内さんと飲み食いしたくありません。ついでにセックスもしたくありません。なのでもう二度と誘わないでください』そう、丁重にお断りしたのだ。いつもいつもそう本音で拒否しているという...

毒舌姫の恋愛事情 11話

「来てたんだね、恵梨花ちゃん」「あ…なんでいるの?」「なんでいるのって…だって此処、僕の家だから」私のコートをハンガーに掛けながら「ちゃんと掛けないと皺になっちゃうよ」と云ったこの人はこの部屋の主。「だって帰って来るの来週って」「其れ誰から訊いたの?確かに出社するのは来週だけど、帰って来るのは今日の予定だったよ」「…」「恵梨花ちゃん、服、ちゃんと着なさい。風邪引いちゃうよ」「あ、うん」そう云われてや...

毒舌姫の恋愛事情 12話

この私を抱けない──と云ったのも彼が最初で最後だ。『どうして抱けないの』『…』『き、汚い女だとか思ってんの?!誰とでも寝るビッチだって…馬鹿にしてるんでしょう!』思わず本性丸出しで怒鳴ってしまった。だけど何となく解っていた。澄まして、取り繕った態度で接しても彼は私を受け入れてはくれないのだろう、と。『…やっと本当の君だね』『!』高揚する私を鎮めるかの様に、そっと彼の大きくて筋張った掌が頬に添えられた。...
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