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ひだまりロボット 1話

人生って突然何が起こるか解らないなと思った──「じゃあ小春ちゃん、また明日な」「…はい」「あんま気を落とさずにな。何かあったらいつでも云っておいで」「…ありがとう…安おじさん」町工場で細々とネジを作っていた父が死んだ。昔はちょっと名の知れた科学者だったそうだけれど、ネジ工場のひとり娘だった母と恋に落ち工場の跡取り婿となった。だけど母は私を産んですぐに産後の肥立ちが悪く死去。以来男手ひとつで私を育てて来...

ひだまりロボット 2話

父が死んでから一週間──其の珍客は突然私の前に現れた。「…今…なんて…」「──もう一度説明する。俺はヒナタ。野々宮博士に作られた人型汎用ロボット。博士の遺言に基づき博士の娘である小春の家族になるためにやって来た」「…」「…」何…この人…すごく…すっごくカッコいいのに…(云っていい冗談と悪い冗談がある事を知らなさ過ぎる──!!)「あ…あのですね…私、そういう冗談は──」私が不機嫌モード全開で彼に厭味のひとつでも云おう...

ひだまりロボット 3話

「小春──起きろ」「…ん」「時間だ、起きろ」「……んん…」「今すぐ起きないと──布団を剥ぐ」「!」私は有り得ない速さでベッドから飛び起きた。「おはよう、小春。朝食の支度が出来ているから食べよう」「…」「顔、洗って来い」「……はぁい」ヒナタが家にやって来てから三日──初めて家に来た時の衝撃が冷めやらぬ内に始まった同居生活は何事も無く進んで行った。今ではお互い『ヒナタ』『小春』と呼び合う仲となり、関係的には兄妹──...

ひだまりロボット 4話

キーンコーンカーコーン学校生活の中で一番大好きな時間がやって来た。「小春、お弁当食べよう」「うん!」親友のあかりと一緒にいつもの様に中庭に移動する。教室から廊下に出て少し歩いた処で前から来た担任の大川先生に呼ばれた。「あっ野々宮、丁度良かった。少し職員室まで来てくれないか?」「え、今からですか?」「ちょっと確認したい事があってだな、直ぐに終わるから」「…はぁ」「じゃああたし先にいつもの処に行ってる...

ひだまりロボット 5話

晩ご飯が済んで一息ついた頃、私は思い切ってヒナタに訊いてみた。「ねぇ、ヒナタ。条林大学の佐野って洵教授、知ってる?」「…」布巾でテーブルを拭いていたヒナタは一瞬動きを止めた。「今日学校で先生から訊いたの。私の高校在学中の授業料とか寄付とか…凄い金額が振り込まれていたって」「…」「其のお金を振り込んだって人が佐野さんっていう人なんだけど」「知らない」「え」「俺の記憶回路には佐野という名前の人物はいない...

ひだまりロボット 6話

私が住んでいるのは町工場が密集しているような下町風情溢れる処だった。大手企業から仕事を請け負っている小さな自営業の工場が多くて、そんな地元の人々の絆はとても強いものだった。「こんにちは、ヒナタくんいる?」「あれ、牧村のおばさん。ヒナタなら買物に行ってるけど」「そうなの?ざーんねん」「そんなあからさまに残念がらないで」「あははっ、ごめんごめん!これ、お裾分け。清次さん好きだったでしょ?柿。お供えして...

ひだまりロボット 7話

「ん?」休日のある日、私はヒナタのシャツにアイロンをかけていて気がついた事があった。ヒナタは家に着の身着のままでやって来たから着替えは父の服を使用していた。父も背が高かったからヒナタの背丈でも充分代用出来たのだ。そして今、私がアイロンをかけているシャツはヒナタが最初に着ていたヒナタの唯一の私服。「このシャツって…ひょっとしてかなりいいものなんじゃないのかな」シンプルな白いシャツだけれど、ついている...

ひだまりロボット 8話

緑の多い何かの公共施設の様な印象を受けた。「…ひ…広い」私はただ呆然としていた。開かれた大きな門の前で私は数分前からウロウロしていた。(日曜日なのに結構人がいるんだ)日曜日の今日、私はヒナタに『和馬と図書館で勉強してくるね』と嘘をついた。ヒナタがちょっと変な顔つきをしていたのが気になったけれど其のまま家を出て来た。ヒナタに嘘をついてまでやって来たのは条林大学だった。亡くなった父が最後まで通っていた大...

ひだまりロボット 9話

「き、君は…野々宮博士の…娘さんだと云うのかい?!」「…はい」いきなり動作が激しくなった男の人に驚きつつも答えた。「なんてこった!僕は尊敬する博士のお嬢さんになんて無礼を!!」「! あの、父をご存知なんですか?」「知っているも何も、博士は僕にとっては憧れの人!いいや、僕だけじゃない!機械工学を学ぶ人間は誰もが野々宮博士を尊敬しているんです!!」「…は…はぁ…」先ほどまでの口調、態度から一転、父の事を身振...

ひだまりロボット 10話

えらく派手でイケメンな人とふたりにされてどうしようかと考えを張り巡らせていると──「やっと来たんだねぇ、小春ちゃん」「えっ」いきなり名前を呼ばれ、にっこりと微笑まれた。「あ…あの…」「ふふっ、本物は写真よりも可愛いなぁ」「?!」スッと近づかれそっと耳元で囁かれた。「俺が佐野徹矢だよ」「!」(この人が佐野さん─?!)「はい、どうぞ」「あ…ありがとうございます」佐野さんのラボラトリーだという部屋に連れていか...

ひだまりロボット 11話

佐野先生は手に持っていたカップを机に置き、私の顔をジッと見た。「全て話してあげるよ。其れが約束だったから」「約束?」「あぁ、清次と俺との約束。もし君が真実を知りたがったら全てを話して欲しいと、清次に頼まれていた」「先生は父と親しかったんですか?」「其の質問に答える前に…昔話から話そうか」「…昔話?」ふぅとひとつ息を吐いた先生は静かに話し始めた。「この条林大学はね、清次と俺と──そして秋穂の母校なんだ」...

ひだまりロボット 12話

「俺はね、昔からこんな形(なり)だったからぶっちゃけモテたんだよねぇ。来るもの拒まず去るもの追わず主義で…まぁ女性関係については適当な交流を経て来たって訳」「…」先生の其の若干自慢話と思われるような話には特に食いつこうとは思わなかった。(まぁ、見た目まんまって感じだもんね)「あーなんか其の視線…最初に逢った時の秋穂を思い出しちゃうなぁ…秋穂は俺が今まで出逢って来た女とは違って、唯一初対面で冷めた視線を...
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