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2017.06.27 (Tue)

私の彼は左利き 1話



私の彼は双子の兄弟の弟の方です。

彼の名前は藤島 右京(ふじしま うきょう)くん。

私と同い年の17歳。

名前は右京、だけれど…

私の彼は左利きなんです。





「里穂ちゃーん」
「…あ」

不意に背後から呼ばれた良く知った声に振り返る。

「今帰り?一緒に帰らない?」
「あ…いいけど…其の…右京くんと待ち合わせ、しているの」
「右京と?じゃあ尚更いいじゃん、どうせ一緒の家に帰るんだし」
「そ、そうだね」

私なんかに気さくに話しかけてくれる貴重なこの男子は右京くんの双子のお兄さん。

藤島 左京(ふじしま さきょう)くん。

双子なだけあって右京くんと左京くんはそっくりだ。

ちなみに左京くんは右利き──だった。


「藤島くん、今帰るの?一緒に帰らない?」
「ごめーん、今日は弟と帰るから~」
「あ、やっぱり左京だった。んーまた今度帰ろうね」
「OK、OK!また誘ってね~智美ちゃん」

「…」

(相変わらずモテモテだなぁ…左京くん)


左京くんと右京くんはみんなから『藤島ブラザーズ』という名称で親しみを込めて呼ばれている。

ふたり共美形で背が高くて、左京くんはスポーツ万能で人懐っこい太陽の様な存在で人気があった。

一方弟の右京くんは勉強が出来るインテリなクール系。

一見冷たい印象を与えるけれど、数少ない言葉の端々から飛び交う何ともいえない大人びいた雰囲気はある特定の人からは憧れの対象として見られていた。

そんな人気者の藤島ブラザーズのひとり、右京くんがなんでこんな取り柄もない平凡な私に告白してくれたのか…其れは私は勿論、友だちや周りの人たちにとっても不思議な事のひとつだった。

私、三井 里穂(みつい りほ)は人気者の彼と付き合えるほどイイ女でもなんでもない、ごくごく平凡な女子高生であります。


「あっ」

昇降口で壁にもたれて本を読んでいる右京くんがいた。

「…」

私の声が聞こえたのか、本からスッと目を離し私を見つけてくれると、一瞬其の顏が歪んだかのように見えた。

(え…?)

「おーい、右京!一緒に帰ろうぜ~」
「…なんで左京がいる」
「なんでって、里穂ちゃん見かけたから声掛けて~そしたら右京と帰るっていうからじゃあ一緒に帰ろうって」
「厭だ」
「は?なんで」
「里穂、行くよ」
「あっ」

右京くんは私の手を取ると、左京くんを置いてグングンと歩いて行った。

「なんだよー冷たいなー右京は!お兄ちゃん、拗ねるからなー」

遠くで叫んでいる左京くんをチラッと見ると、既に周りには女の子が寄って来ていて左京くんを取り囲んでいた。

(本当モテモテね、左京くん)

とりあえず左京くんがひとりぼっちにならなくてよかったなと思いながら、私は右京くんに手を引かれていた。



ある日突然右京くんから告白された。

其のまま付き合い始めてから二ヶ月程。


まだ解らない事が沢山ある彼氏彼女な私たち──だった。


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2017.06.28 (Wed)

私の彼は左利き 2話



──どうして私だったのだろう?


『三井さん、俺と付き合ってください』
『………へ』


小さな頃から目立たない子だった。

引っ込み思案で大人しくて緊張しがちで地味な子だった。


『ずっと好き、でした』
『……』


まともに男子と喋る事なんて出来ない子だった。

其れは小学校、中学校と続いていて『そんなんじゃいつまで経っても彼氏が出来ないよ!』と云った親友のなっちゃんに背中を押され、高校生になってからは其れなりに男子とも話す努力をして来た。

其れがまさか…

(いきなりこんな事になるだなんて!)


二ヶ月前、いきなり隣のクラスの藤島右京くんから呼び出されて、告白されたのには本当に驚いてしまって其の場ですぐに返事なんて出来なかった。

『返事、待っているから』
『……』

勿体ぶった私に厭な顔ひとつしないで優しい言葉を掛けてくれた右京くんに私は其の時、初めて胸の高鳴りを感じた。

藤島ブラザーズという通り名で有名だった美形のそっくり双子兄弟。

兄の左京くんは右利き。

弟の右京くんは左利き。

(名前と利き手が逆なのって不思議だなぁ)

私にとって藤島ブラザーズというのは其の程度の知識と思いしかなかった。

(カッコいいな…とは思っていたけれど…)

私にとって左京くんも右京くんもアイドルみたいな遠い存在でしかないんだとずっと思って来たから…



「どうしたの?里穂」
「あ」

右京くんと入ったカフェで、ミルクティーの入ったカップを握りしめながらつい物思いに耽ってしまっていた。

「最近よくそんな顔をするね」
「そ、そう、かな」
「うん。何か考えている?」
「…考えて…いなくはない、かな」
「随分回りくどい云い方をするね」
「ご、ごめんなさい」
「いちいち謝らない」
「…」

先刻からカフェにいる女性客がチラチラと右京くんを見ている。

(何処にいても目立つんだよね)

多分一緒にいるのが私みたいな地味な子で不釣り合い──とか思われているんだろうなと考えると、少し悲しくなった。

(なんで私…右京くんからの告白を受け入れてしまったんだろう)


右京くんからの告白から三日後。

なっちゃんからのアドバイスや私の気持ちのありのままを突き詰めていったら、私は右京くんに『よろしくお願いします』と告白の返事をしていた。

其れから一応彼氏彼女という関係にはなったけれど…

(なんというか…付き合うってこういう事、なのかな)

クラスの違う右京くんとは毎日昇降口で待ち合わせをして一緒に下校して、たまに寄り道をする。

そして休日には、たまに図書館に誘われて一緒に勉強をして過ごした。


──だけどただ其れだけ


二ヶ月間で何か彼氏彼女らしい事や進展があったかと訊かれると…

(ない…んだよね)

ふぅ、と小さく息を吐き、何となく右京くんの方を見ると

「…」

(! 右京くん…なんでずっと私の方を見ているんだろう)

右京くんはジッと私を見つめていた。

いつもは会話が無くなるとぼんやり外の景色を眺めている右京くんが、何故か今日はずっと私の方を見ていた。

「…あ、あの…どうかした?右京くん」
「里穂、今日この後時間、ある?」
「? 時間って…どうして?」
「時間、あるのかないのか訊いているんだけど」
「あ、ある、あります」
「──そう、じゃあ行こう」
「あ」

いきなり右京くんは席を立ち、伝票を手に会計場所に行ってしまった。

(どうしたんだろう、いきなり…)


今日の右京くんは少しおかしいなと思っていた。

そんな様子なのを薄々感じていたけれど、今になって其れは確信へと変わって行ったのだった。


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2017.06.29 (Thu)

私の彼は左利き 3話



「──え」
「里穂」

そっと右京くんに繋がれた私の手はきっと冷たかったと思う。


右京くんについて行くとある建物の前で立ち止まった。

ふと見上げた看板の【HOTEL】の5文字が目に入った。

(此処って…此処って…)

私はあまりにも驚き過ぎて、一時頭の中が真っ白になってしまった。





「はっ!」
「…里穂」
「!!!」

次に頭がハッキリした時には、私の真上には右京くんがいた。

(こ、こここ、これって──)

そう。

いつの間にか私は、部屋に置かれているベッドの上に寝かされ、右京くんが私に跨っている状況だった。

「里穂…いい?」
「えっ!い、い、いい…って…な、何が」
「…」
「右きょ───んっ!」

いきなり右京くんが私にキスをした。

(キ、キキ、キス?!ファーストキス?!)

私の初めてのキスはいきなり奪われてしまった。

チュッチュと軽いキスを何度か繰り返され、其れは段々深いものになって行った。

「ん、んん…」
「…」

右京くんの舌が私の中に入り込み、私の舌を擦る様に絡めて来た。

(嘘っ!な、なんでこんな)

いきなりどうして右京くんがこんな行動に出たのか全く解らなかった。

だけど私に考える暇を与えない様に、右京くんの私への深く濃いキスは止む事がなかった。


「ふぁ…あ…あっ」
「…」

どれくらい続いたか解らないキスが止んだ時には私はすっかり呆けてしまい、だらしがなく口を開け、唾液を垂れ流してしまっていた。

そんな私の口周りをペロペロと舌で掬う右京くんに其のままなすがままだった。

「う…きょう、くん…」
「里穂…俺は君が好きだ」
「!」
「里穂は覚えていないかも知れないけど、学食で初めて逢った時、里穂は俺を見てハッキリと云ったよね?」
「…え」
「『右京くん、今日はお弁当じゃないんだね』って」
「…」
「俺の事を躊躇わずに『右京』と呼び、そして毎日弁当を食べていた俺を知ってくれていたのは…里穂だけだった」
「…」

右京くんが其の話をするまで、私は其の出来事を完全に忘れていた。


──忘れていた、というより、其の出来事は本当に些細な事で…私にとってはなんでもない事だったから



其れは高校1年生の時。

引っ込み思案な性格を何とかしたくて、高校入学をきっかけに頑張っていた其の頃、何かとよく噂に聞いていた藤島ブラザーズのひとりが学食でうどんをすすっていたのを見かけた。

(お箸、左手に持っている。という事は右京くん…だっけ)

いつも右京くんはお弁当を持って来ていた。

たまに中庭や屋上でひとりでだったり、左京くんとだったり、とても美味しそうなお弁当を食べている姿を目撃していたから、学食でうどんをすすっている姿がなんとなく非日常的な光景に見えたのだ。

(…なんだか喋る口実…ありそう?)

混雑していた学食内で右京くんの隣の席が空いていたのをいい事に、私は思い切って声を掛けたのだ。

「あの…隣、いいですか?」
「──え」

勇気を振り絞って声を掛けた私に、右京くんは特に表情を変えずに「どうぞ」と云ってくれた。

(あ…意外と優しい人、なのかも)

たったひと言を訊いただけで私は安易にそう思った。

其れに気を良くした私は続けて云った。

「右京くん、今日はお弁当じゃないんだね」
「え」
「あ…いきなりごめんなさい。いつも美味しそうなお弁当を食べているの見ていたから…」
「…」
「今日は学食なんだ、と思って」
「…母さん、風邪ひいたんだ」
「え、そうなの?季節外れの風邪って長引くっていうから…どうぞお大事に」
「…ありがとう、伝えておくよ」
「あ…う、うん」


──そんな些細な出来事がきっかけだったと右京くんは私を押し倒しながら語った


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2017.06.30 (Fri)

私の彼は左利き 4話



「俺の事を左京と間違わず、しかも無難に苗字で呼ぶでもなく、里穂は俺を見て『右京くん』と呼んでくれた」
「あ…あの、其れは…右京くんがお箸を左で持っていたから…」
「…」
「右京くんは左利きだから…其の、間違わずに…」
「知っていた?俺と左京、時々入れ替わっていたって事」
「えっ」
「…もっともそう思っていたのは俺たちだけで、相変わらず里穂は俺が左京の振りをしても騙されなかったし、左京が左で箸を持って食べていても里穂は俺と間違わなかった」
「…ど、どういう…事」
「本当はね、左京は両利きなんだ」
「!」
「だから時々左京は俺の振りをして女子をからかっていたんだ」
「…」
「そういう左京の嘘に里穂は一度も騙されなかった」
「…そ、そんな」

(そんな事、全然気が付かなかった!)

「…!」

でもそういえば…

(私はいつから右京くんの事を左利きだけで判断しなくなっていた?)

「…」
「里穂…君は俺の事、好き?」
「えっ」
「俺は、俺の気持ちばかりを里穂に押し付けていて…ひょっとしたら里穂は俺の事、そんなに好きじゃなくても付き合っているのかなと思って」
「ど、どうしてそんな…」
「だって俺、里穂の口から『好き』って聞いた事ない」
「!」
「告白を受け入れてくれた時も『よろしくお願いします』って言葉だけで」
「…」
「其れになんだか俺と一緒にいても里穂、浮かない顔をしているし、何処か余所余所しいし」
「そんな事!其れは…私、どうして右京くんが私なんかを好きになったのかなってずっと考えていて」
「──え」
「まさか…右京くんの中ではあの時のやり取りから…始まっていただなんて…」
「…」

私の体の両側に置かれている右京くんの腕をギュッと握った。

「ごめんなさい…私、ちゃんと訊けばよかった…どうして右京くんが私なんかを好きになってくれたのか…そうしたら私、もっと右京くんに寄り添って…素直な気持ちを云って…右京くんにそんな哀しい事、思わせなかったのに」
「──私なんかって云わないで」
「え」
「確かに里穂を気になるきっかけになったのはあの日からだったけど…其れから俺は里穂の事を見て、知って、里穂のいい処を沢山知って、俺はちゃんと里穂を好きになったから告白したんだ」
「…右京くん」
「だから聞かせて?里穂は俺の事を」
「……好き」
「…」
「好き、私、右京くんが好き。左利きだっていう事がなくても私は、右京くんの傍に行けばちゃんと右京くんだって解る」
「…里穂」
「私…其れ位好きなの…右京くんが…だから、だから──」

心から叫びたかった言葉は途中で遮られた。

「ふ…ぅん…」
「んっ…」

右京くんの唇が私から声を奪った。

強く押し付けられた唇はほんのわずかな時間で放された。

「う…右京くん」
「…俺たち、もっと沢山話せばよかった。そうすれば今日だって里穂といた左京に嫉妬しなくてもよかった」
「嫉妬…」
「怖かった。左京に里穂を取られるんじゃないかって」
「!」
「明るくて陽気な左京の方がいいと…里穂は本当は左京の事をって考えたら…どうしても里穂を繋ぎ止めたくて」
「…」
「無理矢理体を繋げたって気持ちが無ければ同じなのに…でもどうしても俺は──」
「…右京くん」

(じゃあ今日、急にこんな処に来たのも私との事で悩んで…其れで思い余って)

右京くんがそんなに私の事を──そう思ってしまったら、私はとても大胆な気持ちを抱く様になってしまっていた。

「ごめん…里穂、酷い事を──」
「いいの…右京くん」
「え」

私はそっと右京くんの首に両腕を絡めた。

「私…右京くんとしか…したくないから」
「!」
「右京くんが…私を欲しいと云ってくれるなら私…其の気持ちに応えたい」
「…里穂」
「右京、くん」


──私たちの始まりの合図は深いキス、からだった


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2017.07.01 (Sat)

私の彼は左利き 5話(終)



其れは初めて体験したピンク色をした甘美なひとときだった。


「あ…あっ…」
「ん…里穂…可愛いよ」
「ふぁ…そ、そんな…」

初めての行為は私にありとあらゆる衝撃を与え続けた。

自分の体が好きな人によってあんなに淫らに拓かれるなんて。

男の人のモノがあんなに大きな変化をするなんて。

処女で無くなる事があんなに痛くて、そして其の痛さの先に待っている快楽があんなにも凄まじいものだなんて。


(わ、私…知恵熱が出そう~~)


私は右京くんによって大人への第一歩の扉を開けてもらったのだった。




右京くんとの仲が一歩前進した私は、以前のようにオドオドする事がなくなっていた。

「里穂ちゃ~ん」
「あ、左京くん」
「ねぇ今帰り?一緒に帰らない?」
「ごめんね、今日も右京くんと帰るの」
「いいじゃん、どうせ一緒の家に帰るんだし」
「…左京くん」
「ん?なぁに」
「私…ちゃんと右京くんを幸せにするから」
「…」
「左京くん、右京くんの事が心配で…私という女を観察していたんでしょう?」
「…」
「私…ちゃんと右京くんが好きだから。絶対右京くんを裏切ったりしないよ」
「……へぇ、里穂ちゃん、いい顔つきになったね」
「顔つき…?」
「ふっ、益々気に入ったよ~里穂ちゃん!」

いきなり左京くんに痛い程に背中をバンッと叩かれた。

「痛っ!」
「俺、めげない女って好き」
「えっ」
「其れに男によっていい方に変わる女も好き」
「…左京くん」
「じゃあね~右京によろしく!あっ、あんま張り切り過ぎて腰痛めるなよって云っといて」
「なっ!」

あはははっと高笑いしながら去って行った左京くんの後姿を私は見えなくなるまで眺めてしまった。




「ん?里穂、何この背中の手形」
「え…」

ラブホのベッドで右京くんに背中を向けた時、そっと撫でられた。

「誰かに叩かれた?」
「あ…帰り際に左京くんに」
「左京に?なんで」
「えっ…なんていうか他愛のない話の流れから…」
「歯切れが悪いな──というか、この左京の手形」
「右京くん?」
「気に入らないから消す」
「消すって──あっ!」

いきなりうつ伏せにされて、背中に柔らかい感触を感じたと思った次の瞬間

「痛っ!」
「…我慢して、手形だって解らなくなるまでするから」
「そ、そんな…あっ、あんっ」

チュウチュウと強く吸いつかれる音と痛さ、そして甘い疼きを感じながら悶える私。

(まさか手形が消えるまでキスマークを付け続ける気?!)

「ん…里穂…凄い濡れて来てる」
「! や、やだぁ、其処、指入れないでぇ」

右京くんが私の背中を吸いながら、後ろから私の中に指を入て来た。

「…背中吸っても感じるんだ」
「そんな…あっ…あぁん」

グチュグチュと卑猥な音を立てる右京くんの指使いは段々速度を増して来た。

「里穂…はぁ…そんなに俺を誘わないで」
「誘ってなんか…ひゃっ、あっ…あぁぁぁん」
「駄目だ…もう我慢出来ない」
「! う、右京くん」
「また元気になって来た」
「~~~」

先刻2回ほど気持ちいい事をしたばかりだというのに、また右京くんのモノは復活したみたいで…

「本当、里穂は俺を元気にするのが上手だね」
「そ、そんな事っ」
「大好きだよ、里穂」
「…も、もぅ…………私も大好き」


いつの間にか私と右京くんは、こんな厭らしい遊びに夢中になるほどに仲良くなったみたいです。

これからも色んな右京くんを知って、ふたりで幸せになって行けたらいいなと思う私でした。






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