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2018.02.19 (Mon)

Darling Sweeper 21話



高鳴る胸を押さえながらアパートに近づくと──


「あっ、姉ちゃん」
「美生?!」


アパート前にいたのは弟の美生(みき)だった。


部屋の明かりを点け、美生を入れる。


「おぉっ、なかなか綺麗にしてるじゃん。もっとめちゃくちゃだと思っていたのに」
「あ、当たり前よ、一応私、清掃会社の社員よ?!」


(あぁ…内野宮さんが片付けてくれててよかったぁぁ~)


あれから日数は経っているけれど、汚いのがほんの少しで済んでいた。


そっと心の中で内野宮さんに感謝した。


「其れさぁ…本当謎なんだよなぁー姉ちゃんなんかが業界大手のナギノクリーンカンパニーによく入社出来たよな」
「なんかがって何よ!私だってやれば出来るんだからね」


ひとつ年下の美生は私とは違って家事全般を無難にこなす。


だから余計に姉の私がこの歳になってもだらしがないと思われるのは不愉快だった。


其の結果、つい見え透いた虚勢を張ってしまうのだった。


「ふぅん…まぁいいや。其れよりもハイ、これ」
「何よ、これ」
「お義母さんから。入社祝い、遅くなってごめんねって云っていたよ」
「……」


美生は実家で父と義母と共に住んでいる。


私は高校をあえて寮のある学校を選んでいたし、大学も其のままエスカレーターで進学したのでもう何年もまともに家族と顔を合わせていなかった。


「──まだダメなの?父さんとお義母さんの事」
「別に…なんとも思っていないわよ」
「…姉ちゃんは知らないからさ…父さんの事も、お義母さんの事も」
「何よ急に──お父さんに何か吹き込まれて来たの?」
「違うよ。おれ、ずっと思っていた──っていうか…知ってたけど…黙っていた」
「何が」
「父さんの再婚の本当の理由」
「……え」


何故急に美生が私に会いに来てそんな事を云い出すのかが解らなかった。


だけど


「私の知らない何かがあったって云うの?お父さんの再婚に」
「うん…もういい加減姉ちゃんと父さんが雰囲気悪いの、厭だしさ…ずっと口止めされていたけどもう十年経ってるし云ってもいいのかなって」
「口止め?誰にされていたの?」
「──死んだお母さん」
「?! どういう事」
「お母さん、病気で入院していた時におれにこっそり教えてくれたんだよね。父さんをひとり残してお母さんがいなくなるのは心残りだから新しい奥さんを探したんだって」
「何其れ…どういう事?!」


美生の告白の出だしは私に相当の衝撃与えた。


「お義母さんって看護師だったじゃん?死んだお母さんが入院していた病院の。其の縁でふたりめっちゃ仲良くなったみたいで、お母さん、あの看護師さんは妹みたいだって云っていたんだよ」
「…そんな話、知らない」
「姉ちゃんには云い難かったと思うよ?だってなんか姉ちゃん、最初っからお義母さんの事嫌っていたでしょ」
「だって、お父さんと一緒に病院にお見舞いに行く度になんだかお父さんに馴れ馴れしいっていうか、お母さんの前でも看護師以上の接し方してて…厭だなって思っていたんだもん」
「あれ、みんなお母さんがお膳立てしていたんだって。父さんにお義母さんを勧めていたって感じで」
「…そんな」


(なんだろう…なんだか…)


厭な予感がする──


「勿論父さんは初めはお義母さんにはなんの気持ちもなかったと思うよ?兎に角お母さん一筋だったからさ。でも…いざお母さんが亡くなって…其処に共に大切な人を失くした者同士が慰め合っていたら…やっぱりそうなるんじゃないの?」
「…」
「死んだお母さんが最後まで自分を心配していたって知ったら…父さんは其の想いをなかった事には出来ないと思ったんじゃないのかな」
「…」
「つまり死んだお母さんの最後の願いは叶えられたって訳」
「…」
「お母さんはさ、自分の死期を悟ったと同時におれ達の事も考えて、父さんの事もおれ達の事も幸せにしてくれる人を探していたんだよ。自分がいなくなっても寂しがらないようにって」
「……」
「まぁ、お母さんの其の考え方がいいのか悪いのかは人其々の考え方なんだろうけどさ、いくらお母さんに『恵麻には内緒でね』って口止めされていたとはいえ、其のせいで姉ちゃんと父さんの雰囲気がずっと悪いのはおれ的に心苦しくてさ」
「……」


私だけが…


私だけが知らなかった父の本当の再婚の理由。


私はただただ呆然と美生の話を訊いているしかなかったのだった。


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